山形県で就農、ゼロスタートから挑戦する結果を出す農業/鈴木秀人・かおりさんご夫妻

千葉から山形県へUターン。決意を固め就農、ゼロからの出発も意気揚々と!

山形県北部出身の鈴木秀人さんは大学から千葉に出て就職。IT関係の営業に勤めて6年が経ったころから「いつかは地元に帰りたい。」と思うようになり、その気持ちは、かおりさんとの結婚を機に高まります。しかし自分は都会を離れて何ができるんだろう?そんなことを考えていたとき、テレビで観た農業をする若者の姿に釘付けとなりました。これだ!農業がしたい!秀人さんの中で、二人で進む未来の地図が広がりました。しかし、「非現実的だわ…。何言ってるの…」そんなかおりさんの反応も、無理はありません。

山形県で農業を始める鈴木夫妻

実家が農家でもない。農業をやったこともない。ゼロからの出発だからです。それでも鈴木さんは「自分はできる」と信念をもって、かおりさんと話し合います。ただ「田舎暮らしがしたい」ではなく「農業で生業を立てる」ということ。子どもを育てるなら、都会より地方がいい。待機児童などの問題がなく、伸び伸びと育てられる環境があるからと。かおりさんは、目標を掲げる秀人さんのポジティブな意思の強さに「応援したい」と気持ちが変わりました。千葉県出身で介護福祉士の仕事をしていたかおりさん。続けてきた仕事を辞め、自分も一緒に就農する不安もありましたが、農業と田舎暮らしの大変さを心配する両親を説得し、秀人さんを支え、二人でがんばっていく決意を固めました。

山形就農

秀人さんは東京・池袋で行われた山形県の就農フェア(農業をやることに興味のある様々な方が気軽に情報を得られるイベント)に参加。一歩踏み出したことで、新しい人生のページが開きました。そこで出会った農家さんに研修生として受け入れてもらう事が決まったのです。

農業に必要なのは決断力と仲間の存在

先輩農家に助けられて農業をはじめる

長井市の隣町にある農家さんでの1日研修・3回(春先に見学・秋に作業・冬に作業)に参加し、翌年2011年山形県に移住しました。「この短い研修で農業をする決意をしたんですか?」と伺うと、「みんなそんな感じですよ。3年とか躊躇してる人の方がやめていきます。1年くらいで動いている人が多いですよ。勢いですかね。」と清々しく答えられました。

自然相手の農業に携わるには迷っている時間はなく、問題が起きたら、瞬時に決断していかなければならないため決断力、実行力、直感力の素質が必要なのかもしれません。経験がその力をつけていくこともあるかもしれません。新規就農の入り口から秀人さんのその力が発揮されたようです。

秀人さんの話を聞いていると「迷いや悩む」といったことが感じられません。いえ、あるかもしれないのですが、考えるだけの深みにはまらず行動し解決しているようです。またこの解決には相談出来る地元の仲間の存在がかかせません。

長井市農業

就農当初は長井市が間に入り、農家さんから土地とハウスを借りて、2年間、花とアスパラガスを栽培していましたが、経営が上手く行きませんでした。3年目「中心作物がアスパラじゃないな…」と別の農作物の生産を考え始めます。

そんな時に若手農家の集いで、長井市で代々農家を営む梅津光宏さんに出会いました。それまで、秀人さんと梅津さんのハウスは道路を挟んですぐ近くに在りながら、話す事がありませんでした。「顔は知ってたんですよ。どこの誰なんだろうなぁ〜って思ってました」と梅津さん。2世代でお米、露地、ハウスと手広く農業を営む梅津さんは、同世代でありながら経験値がありました。

長井市農業

行動の秀人さんはさっそく相談します。そしてトマトを長期間栽培する〝しかけ〟を教えてもらいました。その後は梅津さんとのおつきあいも深まり、お互いの様子を見合う関係となりました。困った時に「ちょっと…!」と電話をかけられる人がいる心強さがあるそうです。「大雪の時の除雪で困ったときは、本当に助かりました。ハウスの脇に水を流すといいと教えてもらい、水を流す装置をつけました。それまではスコップや除雪機でやってたんで画期的で、雪によるハウスのダメージがなくなりました。」

長井市農業

長井市のトマトの組合にも入り、さらに繋がりが広がりました。近くにいる経験値のある相談相手のいる心強さ…仲間に支えられながら秀人さんは農家のプロへ成長しました。

確実にいいものを目指し、ひたむきに働く。

今ではハウスでミニトマトを中心にワサビ菜や葉野菜、春先になるとアスパラなど露地ものを栽培しています。就農5年目に新居も構えました。それが働く意欲になっているそうです。うまくいっているか?と問われると、まだ技術的には未熟な部分があります。しかし年間に作る作物も、4月にミニトマトを植えて、9月後半から10月まで収穫。その後ワサビ菜を植え付け、10月後半から3月まで収穫と固まり「いろいろな作物に挑戦したい気持ちもあるのですが今は確実なものを。」と逸る気持ちを抑えて、目の前の仕事にひたむきに取り組んでいます。

「この6年で生活も仕事も大きく変わりました。もっとおいしいトマトをつくりたいですし、市場だけでなく直売所にも置けるようになりたい。」鈴木さんはアスファルトを歩く日々から土を踏みしめる生活へ大転換を遂げました。農業は手間暇をかけた分のことが結果として返ってくる仕事。小さく始めてから確実に成長して、今後の展開にも意欲を燃やします。たとえ困難なことが起こっても一番近くには奥さんかおりさんのいる心強さがあるそうです。

長井市農業

「エイっと飛び込んでそれから悩むんですよね」と笑顔で話す秀人さん。これからも明るく前向きに秀人さんらしい農業を営み、作物を作り続けていきます。新規就農を考える人にとって鈴木さんご夫妻の歩んできた6年は多くの学びになることでしょう。


長井市
長井市は山形県南部に位置し緑豊かな山系に囲まれ、中央部に野川、南部に最上川、そして白川が合流する「水」の豊かな土地です。最近では、米だけでなく露地やハウスの野菜、果実の栽培を手がける生産者さんが増えています。