大切に手間をかけてつくる「伊佐沢すいか」の味/山形県長井市 志釜和紀さん

みんなに美味しいものを作って欲しい


山形県長井市の東部・伊佐沢地区にある志釜和紀さんのすいかは、市場、直売所、ふるさと納税、様々なところへ流通しています。昔から個人のお客様にも評判が良かったため『自分のすいかは美味しい』ことは志釜さんの自慢でした。しかし5年ほど前から『伊佐沢全体のすいかが美味しい』ことが重要だと思うように考え方が変わりました。
地元の外へ販売に出かけた際、よく比較されるのが同じ県内の「尾花沢すいか」です。味や品質云々の前に、知名度が及びません。そんな中で『「志釜さんのすいか」の方が美味しい』と言ってくれる方もいます。一方でたまたま食べた「伊佐沢すいか」が美味しくなかったら…顧客として離れていく可能性があります。これには逆も然りです。「ちっちゃい産地なんだけんど…」だからこそ、間違いのないものを一つ一つ丁寧に届けていく必要を感じたのです。

「伊佐沢すいか」への想い


「50代やうちら40代で、園地を周って品質の安定、向上を働きかけています」80代でも現役、元気に栽培されている方もいますので、いっぺんには行き届かない部分もありますが、伊佐沢地区のブランド確立のために志釜さんは奔走します。
他にも、地元直売所では品質検査を取り入れ始めました。良いものは良い、ダメなものが良いランクの棚にあったらそれは下げると徹底しています。立ち上げは志釜さん?と尋ねると「検査体制をつくっぺって、誰が言い出したわけではないけれど」と志釜さん。
稼働から2年足らずですが、直売所の検査体制は早くも手応えを感じています。志釜さんが青年部置賜地区の副委員長や県の役員なども務めて来たことこと、そして柔和な人柄が功を奏しているのでしょう。「こうこうやりたい、と言った時にサポートしてもらった」と良き年長者に支えられてきた志釜さんは、謙虚に感謝を口にするのでした。

これからの伊佐沢すいか


近年のすいかは品種改良によりシャリ感が強く、糖度が高くなり、栽培がしやすくなっているそうです。しかし、お客様の舌も目も厳しくなり、年々「量より質」が求められています。「手間はかかるけれど美味しい…昔のやり方に戻っていくのではないかな」と志釜さん。そうなると、小さくて優しくてあったかい、伊佐沢だからこそできることはまだまだありそうです。

失敗知らずの志釜さんに辞めたいと思ったことがあるのか尋ねてみると「最近ですかね。歳をとってくると、会社員いいなって思ったりします。腰に来るんですよ」と冗談まじりに言い「重労働だけど、美味いものをと思って作って、実際美味かったって喜んでもらえっとやっぱり、もっと美味いものを作りたいって思うよね」四半世紀で培われた生産者魂は正直です。
 
「汗かいて、つかっちぇるし、手もきったねえんだけど、休憩のとき手で割って食べるすいかが一番うまいと思うよ。畑で採れたてのすいか。あったかいんだけどうまいんだよ」畑で太陽をたっぷり浴びた「すいか」を食べられるのは生産者の特権。「あったかいすいか」の美味しさを語る志釜さんの両手には、7キロを超えるすいかが軽々2つ抱かれていました。志釜和紀さん、これからもまだまだ現役です。
長井市
長井市は山形県南部に位置し緑豊かな山系に囲まれ、中央部に野川、南部に最上川、そして白川が合流する「水」の豊かな土地です。最近では、米だけでなく露地やハウスの野菜、果実の栽培を手がける生産者さんが増えています。