自由を謳歌する青年の脳裏に浮かんだのは、 なつかしい故郷の風景だった

会津美里町・元木博人さん

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就農までの道のり

生まれ育った豊かな自然の中で農業を

子どもの時から、この会津の豊かな自然環境の中で遊ぶことが好きでした。若いころは農業をやろうとは思っていなくて、自然環境に興味があったため、富山大学で環境問題の勉強をしました。研究は高山植物、川魚のイワナの生態で、農業とは違う分野のことを学んでいました。

大学卒業後、自然豊かな土地を巡る旅をしていたのですが、自由を謳歌しすぎて、その状況が苦しくなってしまいました(笑)。そんなときに、「将来住みたいのは、会津美里町だよな」って改めて感じたこと、そして両親が農業をやっていた風景を思い出し、戻って農業をしたいと思うようになりました。会津美里町に戻ることは決めていましたが、正直にいうと親元で農業をする気はありませんでした。私の両親は慣行栽培で、私はなるべく環境に負荷をかけない有機栽培をしたいと思っていたからです。また、両親とは経営を別にしたいと考えていたので、生活資金を準備してからの就農になりました。

これから就農を考えている方にも、まずは当面食べていくだけのお金を用意することをお勧めします。また、国の支援制度も活用しました。その当時は使い道がある程度決められていたのですが、大型特殊免許の取得費用や研修に行った時の費用、書籍や資料の購入に使いました。

就農後の取り組み

有機農業は、ずっと学び続けていくべきもの

こうして私の農業従事者としての生活が始まりました。すぐに有機栽培に取り組むことにしたのですが、当然ながら有機農業では化学農薬や化学肥料が使えません。人から借りた土地をいきなり有機農業にすると迷惑をかけることにもなるので、まずは自分の土地で始めることにしました。有機農業については、「風の会」の方にお話を聞いたりしました。この会津美里町では、身近に有機農業をしている農家さんがいたことは、心強かったですね。

私は農家の息子ではありますが、農業のことはあまりわかっていませんでした。野菜も米も「畑に植えたら勝手に育ってくれる」と思っていたんです(笑)。でも、当然ながらその時々の作業があるわけです。最初の1 年は「こんなはずないのに」ということが多々ありましたし、それは今でもあります。有機農業は、ずっと勉強していかないといけないものだと思います。

現在、有機農業を始めて15年になります。何をもって「軌道に乗った」と言えるかわからないけど、始めてから丸3年~5年は試行錯誤を繰り返してきました。特に除草が大変で、ひたすらはいつくばってみたり、チェーン除草したり、合鴨農法なんていうのにも挑戦しました。

これからの展望

将来的にはすべてを有機にしたい

就農当初は全面積の約1/4くらいを有機農業で始め、徐々に増やして今は全面積2/3ぐらいまで拡大しました。将来的にはすべてを有機農業にしたいと考えています。会津美里町で点在している有機農業がこれから面となって広がっていき、この地域が豊かな自然環境を育み、経済的にも豊かになってほしいというのが、私の願いです。会津はいいものが穫れる場所だから、そこに有機農業の技術が加われば鬼に金棒なんです。

私は農業の閑散期である冬、地元の酒蔵で酒づくりに携わっています。自分で育てた有機栽培の酒米を出荷するだけじゃなくて、お酒になるまでを見たいと思ったからです。私自身、お酒を飲むことも好きですし、お酒ができる一連の作業に携わることができるのは喜び以外の何物でもありません。

よく「有機農業だけで生活できるのか」という質問をされますが、私はできると信じていますし、やり方次第で高品質のコメや野菜を大量に収穫することができます。これから福島県での就農を考えているという人がいたら、とにかくチャレンジしてほしいです。失敗することがあるかもしれないけど、それを失敗ととらえず、「経験」と捉えてぜひやってほしい。私が協力できることがあれば、なんでも協力しますよ。

有機農業を目指す人へ

とにかくチャレンジ!
有機農業は、化学肥料と農薬が使えません。とくに最初の1年目は「こんなはずじゃない」ということがたくさんありますし、僕は今でもあります。でも、有機栽培は、高品質で量もとれるし、気候変動にも強い。だから、とにかくチャレンジしてみてください。最近では、新規就農者に対する助成金も手厚いですし、美里町は農業用の土地や家も借りやすいですよ。

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