背景と課題
時間外割増賃金を求める申し出を経験するなど事案も、オープンに社内共有

北海道でトマトや葉物野菜などを中心とした施設栽培を行っている有限会社余湖農園では、収穫後の野菜をパック詰めする作業など多くの手作業を必要としています。現在、余湖農園で働いている約40名のパートの中で、65歳以上が80%の状況となり高齢化が進んでいますが、なかなか新しく人が集まらない現状にあります。また、以前勤めていた契約社員が契約終了後に残業代の支払いが不足していると労働基準監督署に申し出たことで立ち入り検査を経験しました。そうしたことを経験した余湖農園では、職場環境の改善と同時に、正しい労務管理の維持に努めています。
実際に行った対策
常に起きたことはオープンに。透明性ある社員教育と労働環境改善へ取り組む

関連会社であるグローバル自然農園と余湖農園を合わせ、正社員が13名、外国人技能実習生11名、パート数名が働いています。北海道の耕種農業では1~3月の期間は農閑期となり、売り上げが下がる時期となります。その反面、夏場は農繁期となり、1日8時間以上の労働時間が発生します。労働基準法上、農業は時間側割増賃金の適用除外となることから、余湖農園では日本人従業員に割増賃金の支払いをしていない一方で、労働基準法上の適用除外とならない技能実習生や事務職の従業員には割増賃金の支払いを行っています。
余湖農園では、年間の労働時間や割増賃金の差から生まれる日本人従業員の不満を補うために、勤続年数に合わせた有給休暇取得可能日数を設定し、規定日数の取得を必須ルールとして従業員に促しており、特に、農閑期に従業員は有給休暇をきちんと取得するようになっています。また、社員間のコミュニケーションの場として、社員やパート、研修生も含めた全員が集まり、BBQパーティーや新年会などを行い、従業員が楽しめる機会を積極的に用意しています。業務量の増減がある環境での労働を実施するため、健康診断を年1回から年2回に増やして、従業員の健康管理にも気を配っています。

以前、元契約社員から残業代の支払いが不足していると指摘された要件は、立ち入り検査の結果、その作業は農業として行われている一連の作業の中の1つと判断され、指導の対象とはなりませんでした。このようなことを経験し、時間外割増賃金の未払い請求の事例をすぐに社内共有し、月1回従業員全員で行っている研修会の中で、話し合いの場を設けました。自園ではこうした事例だけではなく、常に起きた出来事をオープンにしており、社内共有しています。
幹部社員が経営を学ぶことができるように、外部主催の農業経営塾への参加を実施しています。さらに、農業経営や関連する法律について学んだ幹部社員が中心となり、従業員への社内研修も実施しています。また、社員やパート、実習生も含めて、余湖農園で働いている人たちが、どんな悩みを持っているのか、これからどうしたいと考えているかなどをヒヤリングできるように、定期的に面談を実施しています。職場での業務の打ち合わせだけでは話すことのできない、プライベートなことも含めて相談できる場を設けたことは、働く人に寄り添えるような環境づくりに取り組んでいます。
取り組みの結果
労働条件に誤解が生じない社内研修の重要性

野菜栽培の特性から、人手を必要とする中、積極的に有給休暇の取得を促し、社内研修会や懇親会などコミュニケーションの場を設けています。そうした取り組みにより社内の雰囲気が良くなっており、高齢のパートさんには負荷がかかる業務は、率先して若手が手助けするなど、助け合いの風土ができてきています。また、今回経験した時間外割増賃金に関する事例をもとに、労働条件を会社と従業員で事前に確かめる機会や、従業員が正しく法律を理解できるような研修を実施し、労働条件に誤解が生じたりしないように取り組んでいます。
その後(会社・従業員の声)
余湖農園では、農業経営のやり方にも工夫をしています。例えば、取り扱い品目の見直しを行い、多くの人手を必要とするトマト、ナス、きゅうりなどの生産量より、機械化をすることが可能な、大根、人参、ネギの生産量を増やせるように、マーケットの拡大に努めます。そうすることで、売上高に占める人件費割合を下げて、利益につながるようにすることで、経営の安定に取り組んでいます。

