背景と課題
就職難だった時代を過ぎ応募者が急速に減少。人を大切にすることを重視した取り組みを開始
岩手県北上市にある株式会社西部開発農産の代表取締役社長照井勝也さんは、2000 年代前半、大不況で就職難だった時代までは買い手市場を経験。当時は、特段手を打たずとも毎年高校卒、専門学校卒、大学卒の就職希望者が20 人ほどあり採用に苦労はしませんでした。その後、景気の回復につれて応募者が急速に減少。農業人フェアや合同企業説明会に出向いたり、就職サイトを活用しても応募者が増えず、さらに離職者の補充も難しい状況が続きました。そのような中で人材1人1人の重みを実感し、魅力的な仕事・職場作りへの取り組みを始めました。

実際に行った対策
新しい人事考課制度の導入により、30 代での管理職登用へ。自分で考える習慣づくりによる人材定着を実現
真っ先に取り組んだのは、年功序列の廃止です。年齢や性別にかかわらず結果や成果を認める新しい人事考課制度を導入しました。その結果、30代で管理職に就くケース等も生まれ、社員のモチベーションアップにつながりました。具体的には3分野11項目の人事考課を本人、直属の上司、人事責任者の3段階で行い、同時に面談も実施するというもの。特に30代、40代の働き盛り世代が「頑張ればポジションアップできる」とやる気を出し、存分に力を発揮してくれるようになりました。

日々の仕事は、作業班ごとに割り当てる方式を採用。同社は栽培品目が多く繁忙期もそれぞれ異なるため、担当を固定しすぎないほうが効率的。作業班は時期によって仕事内容もメンバー数も臨機応変に組み替えます。新人は班内で実践的に仕事を学び、多様な現場を経験できます。この方式は、年々事業を拡大する中で試行錯誤を重ね、現在の形にたどり着きました。
働き方改革の一環として、就業時間と休日数を改善。業務カレンダーを作成し、米穀類や野菜作りの農繁期は就業時間を長く、逆に農閑期は短く設定しました。休日については、2019年は前年より13日増やし、20年はさらに増加を目指します。農業、畜産業は一斉に完全休日が取れないため、担当ごとに毎月シフト表を作成し全員の休日を確保するようにしました。

就業時間と日数を減らすことで仕事量を落とさないようにするため、業務の効率化は必須。トラクターの自動操舵や、農地のタブレット管理など、ICTを取り入れた「スマート農業」への取り組みを進めています。広範囲にわたる農地の集約化も、引き続き推進します。
さらに従業員が資格や免許を取得する際に50%から全額を補助する「スキルアップ制度」も導入。大変多く活用されており、本人のモチベーションアップのみならず、社員の知識とスキルが上がることで社にとってもプラス効果を生んでいます。
また社全体で「指示しすぎない」ことを徹底しています。農畜産業は自然相手の仕事であり、原因の追究や結果の予測、判断力、臨機応変な対応力が欠かせません。従来にない方法を生み出す発想力もほしい。そのために新人時代から現場で「自分で考える」習慣をつけることが必要です。これは仕事の楽しさややりがいを実感することにもつながります。
取り組みの結果
社員の満足度があがり、定着率向上

新しい考課制度は効果を上げています。査定項目が明確で透明性が高いことも、社員からは好評。面談を通して縦の関係性におけるコミュニケーションがスムーズになり、社員のモチベーションと同時に仕事の効率や質も向上。一定の離職はありますが、仕事に対する不満を理由に辞める人を減らせると考えています。作業班方式は様々な作業ができ、特に若い世代に好評。今後も働き方改革をさらに進めますが、まず一日の終業時間や休日を明確に定めたことは、社員のやる気アップにつながっていますし、採用募集時にもポイントになると思います。
その後(会社・従業員の声)
生産部次長の菅野一成さんは、考課制度に手応えを感じているそう。部下と年3回の二者面談は「社員にとっては普段は言いづらい要望や職種の希望を伝える機会、社側からは求める人材像を理解してもらう機会」と捉え、ざっくばらんに本音を語り合える雰囲気を作っているといいます。広大な農地を有し、米穀、野菜、畜産、加工・飲食と多様な事業を展開する西部開発農産。食を通して北上地域、岩手県をけん引する存在としてさらに発展するために、従業員にとっての職場と仕事の魅力を追求しています。

