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離農が進む地域を、若者とスマート農業で切り拓く

農業経営者の方に対し、農業の雇用管理の知識・経験が豊富なアドバイザーが無料で研修会や個別相談を行います。

離農が進む地域を、若者とスマート農業で切り拓く

背景と課題


震災後、3200戸のうち85パーセントが示した離農と委託の意向 。その中で、小高地区を維持するために。


代表の佐藤さんは30代の頃から農業の傍、集落営農組合連絡協議会会長や市の農業委員、町議会議員(小高町当時)など様々な経験を持ち、地域に対して熱い想いで取り組んできました。個人の農家でありながらも、役柄上、各地に出かける機会も多く、広い知見、全国との繋がりを持っています。地域農業の先を見据え、法人の立ち上げを計画していた矢先、東日本大震災が起きました。原発事故直後に避難指示区域となり、2012年4月に立入許可が解除されましたが、多くの農家がすぐには営農再開できませんでした。その結果、85パーセントが離農と委託の意向を示し、自力で生産活動ができる集落は15から3つへと縮小します。法人化を共に計画していた30〜40代の中堅が戻れない中でも、ふるさとを荒廃させたくない、誰かがやらなければならないと、紅梅夢ファームを2017年に 立ち上げました。





実際に行った対策


若者の雇用、研修カリキュラムを活用した人材育成とスマート農業の導入。ポイントは「見える化」経営。


現在、地元の農業高校新卒者を2名雇用し、新人教育に農林水産省の「農の雇用事業」を活用しています。農の雇用事業には、生産技術や経営ノウハウ等の習得を行う際の助成制度があり、条件の一つに2年間の研修カリキュラムの作成があります。日々の作業をカリキュラムに落とし込んでおり、佐藤さんを講師に現場での作業そのものが研修になっています。農業機械の操作から、花の栽培、苗づくりなど、実務を行う上で必要なこと全般を網羅しています。可視化されたカリキュラムに基づき、要点をおさえた指導のもと業務を行い、日報へ記録するため、新人社員の理解度の向上、モチベーション維持にもつながっています。自身の経験からも、外の世界を知る機会を大切にしており、各種の外部研修には積極的に参加させ、学びの場を提供しています。





また、就農間もない若者の現場で、最先端の機械が技術面のサポートになればと、ロボットトラクター、農業用ドローン等、ICTの導入も行なっています。熟練の技を持たない若者が、安全で正確に、効率よく農作業ができれば、少ない人数でより多くの作業も可能になります。先々の高齢化、労働力不足の解消にも繋げる狙いです。2019年からは国が推進する「スマート農業加速化実証プロジェクト」にも採択され、スマート農業の実証事業に参加、無人運転、収穫と同時に行える食味や収量の測定・分析など、更なる効率化を進めます。作業効率改善はもちろんのこと「今の農業人は、数字に強くならなければやっていけない」と佐藤さんはデータを読み解く力、数字の重要性も社員に伝えます。ほ場のロボットから瞬時にパソコンに届く数値データの管理は若いスタッフに任せています。




 

現在、社員は4名。耕作面積は60ヘクタールです。スマート農業では1人あたり20ヘクタールを基準とされていますが、実際の業務上は、天候や作業状況による対応が必要な場合もあるため、あと2名ほど必要と感じています。小高地区全体で2800ヘクタールある農地を維持するために、3農業法人と10カ年計画を立てています。3社で分担しても1社あたりの面積はとても広く、これを実施するためにもICTの活用は不可欠です。自社で担当する500ヘクタールに向け、雇用増加、次世代型農業人の育成を行い、規模拡大を目指します。「地域の農業の見本となれれば」と、佐藤さんの方針は明確です。買ってもらえるのならば安くても売るのではなく、価格交渉をして適正な価格で取引ができる販路を開拓しています。他の業界では当たり前のことを農業でも行うことで企業の成長を促します。結果として一般的な地元企業と同じ水準の給料、休日、労働環境整備にも繋がっています。


取り組みの結果


地域の人たちへの刺激、営農再開の希望に





震災を経験した若い世代は、地域に対してとてもしっかりした考えを持っています。「うちの社員たちが軽トラ乗って畑に行くと、なんでこんな若ぇのが百姓やってんだ?と驚かれます。彼女たちの地域に対する想いを伝えると、そんな若い子たちがいるなら、俺たちも野菜づくりするかな、と。彼女たちの存在が地域の人たちへの刺激になっているんです」と佐藤さん。法人設立当初は、中堅世代の採用を希望しておりましたが、現在は若者を毎年採用して、育てていこうという気持ちが年々強くなっています。


その後(会社・従業員の声)


震災を経験し「地域のために農業をやりたい」と高校卒業と同時に入社した鈴木さんは「農の雇用事業」で研修を受けています。ずっとこの会社で働きたいと最先端技術に触れながら農業ができることを楽しんでいます。もうすぐ二十歳の鈴木さんは「地元の自分と同じ世代や、もっと若い人達がここで農業をやりたいと言ってくれたら嬉しいです」と次世代への想いを語ります。そんな鈴木さんについて佐藤さんは「本当に頼もしいんですよ」と嬉しそうに話します。小高地区の未来に種を蒔き、ていねいに育てていきます。