背景と課題
従業員が安心して働ける職場環境にすることが、雇用安定につながると考え社会保険の任意加入を決断。

富山県小矢部市にてお米を中心に事業を展開している株式会社宇川農産では、2019年3月に法人化するまで個人事業主として農業を営んできました。宇川農産が個人事業主当時の従業員は3名でしたが、労災保険に任意加入していました(5名未満の場合には任意)。しかし、同じく任意加入である社会保険には加入していなかったため、従業員が病気になった場合などに保障をしてあげられないことが気がかりでした。そこで、代表取締役の宇川純矢さんは、従業員が安心して働ける環境づくりをして「安定雇用」できるように社会保険の導入に段階的に取り組みました。
実際に行った対策
他産業同様に、当たり前に必要なことを、当たり前に行うことで、雇用安定につなげる。
平成元年より、現在120ha の面積にお米を中心に事業を展開。家族も従業員に含め、従業員7名で働いています。以前は、従業員の入れ替えも激しく定着しないという問題を抱えていた宇川農産では、まず初めに、社会保険(健康保険、厚生年金保険)の導入に着手しました。

きっかけは、5年程前に知り合いの個人事業主が数名の従業員に対して、社会保険を導入しているのをみたときでした。宇川さんは調べてはじめて、個人事業の場合には社会保険への加入義務が無いだけで、任意加入は可能であることを知りました。また、従業員側にも病気やケガをしたときに健康保険が適用になるということを知らない人もいる。だからこそ、個人の知識の大小や、選択の自由で社会保険への加入をするといったものではなく、会社が率先して社会保険に加入する重要性に気づき取り組みました。
その結果、従業員の定着率に変化がみられるようになり、家族がいる人にも安心して働いてもらえる他産業の企業と同じく、当たり前の職場環境づくりへシフトしていきました。「小規模の農業経営者は社会保険を選択する機会が少ないように感じている。経営側、雇用側の双方にとってプラスに働くと思うので、ぜひ社会保険導入を進めてほしい」と宇川さんは言います。

しかし、社会保険の導入は給料のベースが高くないと、事業主と従業員が折半で負担する形となり、社会保険の対象となる金額が給料から引かれるだけとなります。こうしたこともきちんと理解した上で、従業員満足を上げるためには、給料のベースを上げてから社会保険の導入をする必要があると宇川さんは気づき、会社の利益を上げる取り組みを始めました。
まずは、お米と組み合わせて、付加価値の高い「ハト麦」の栽培を実践し強化することを行いました。ハト麦は、富山県が日本一の栽培収穫量を誇るまでに成長しています。更に3年前から育苗が空いている時期に野菜作りを始めました。この後、冬場の高収入を見込みイチゴ作りをスタートする予定を立てており、安定した経営にも力を入れています。また、3年程前からオンライン販売にも着手し、販路の幅を広げています。
取り組みの結果
雇用安定に必要なことに取り組み従業員満足
社会保険制度の導入以外にも、残業・休日出勤手当や、天候で休みを入れ替えた分は有給をつけるなど、対価をきちんと支払うことで、従業員満足へもつながっていきました。働き方についても農繁期(7~17時半)と農閑期(9~16時)といった変形時間労働制の導入や、ゴールデンウィークは農繁期なので毎日忙しいけど、正月はきちんと休んでもらう等、従業員の暮らしを大切にしています。宇川さん自身が過去サラリーマン時代に当たり前だったことを農業経営に取り入れていった結果、従業員が徐々に安定していき今につながっています。
その後(会社・従業員の声)
新潟県から移住し農業に従事するなど、定着している従業員も出てきています。今後は、イチゴ作りを始めることで、女性の雇用を作り職場環境に新しい風が入ることを期待しています。地域では、合同会社ぐるる富山の設立にも関わり、地域の養鶏場の鶏糞を使った堆肥作りを行い、畑に還元し、飼料用米を作り循環させる「循環型農業」の実践もしています。地域の中で必要とされる企業でありたいと考え、収入のバランスと何より“人”と“地域”を大切にしながら経営を続けていきます。

