背景と課題
日本の農業の活性化をはかるため、農業の職業訓練学校を自ら経営
2000 年に有機JAS の認証を取得した山口農園。当時は家族経営で、365 日昼夜を問わず農作業に追われていたそうです。収穫に合わせて早朝に起床し、昼間に休憩したら夕方から深夜まで作業。生産物を市場に出しても、労働に見合う販売価格で取引ができない。「これでは若い担い手が生まれない」と感じていた代表取締役社長の山口貴義さんは、2005 年の法人化を契機に、奥さんのご実家である同農園に就農し、経営体制や販路開拓などさまざまな改革を進めていきました。さらに、高齢化が進む地域農家の現状を目の当たりにし、「1 次産業を衰退させないために、一人でも多くの農家を育成したい」と考えるように。人材育成のため、アグリスクールの運営も手がけるようになりました。

実際に行った対策
家業から企業へ 。待遇改善と作業改善を積み重ね、安定した有機農業を実践
地域柄、「農業は家族で営むもの」という意識が強く、当初は従業員を雇用することに家族からの反対がありました。しかし、山口さんが強い決意で従業員を雇用し始めると、家族も自らの作業負担が軽減されることを実感し、徐々に受け入れるようになっていきました。その後、少しずつ従業員が増加し、生産部・収穫部・調整部など各部署による完全分業制が実現しました。 また、「労働環境を整えなければ人材確保ができない」と、3年前からはシフト制を採用し、週に1日だった休日を月に7日に増加。固定給制や年に一度の昇給システムなど、一般企業と同様の待遇を導入することによって従業員は安定した収入を得られるようになりました。
作業場では、野菜の袋詰めから検品、ピッキングまで一直線の動線を作り効率化しています。2年前には自動包装機も導入したほか、JASマークは袋ではなく簡易なシールで管理することによって、コスト削減と従業員の負担軽減を実現。絶え間ない改善の積み重ねが労働環境の改善に繋がりました。

ビニールハウスでは、うねを作らない「一面まき」で野菜を育てます。種を端から中央に向けて渦巻き状に蒔くことで全面に播種でき、収穫量を増やしているのです。水は、スプリンクラーではなく、両端に設置したホースから供給され、ミスト状で散布されるためムラがなく、設備コストも抑えられます。また、事務所入り口に掲げられたホワイトボードには、クレームの内容とその原因、該当のほ場を掲示しています。クレームの原因を究明するには、情報共有が不可欠。原因を明確にして次に生かすことで作物の質を担保しています。

販路は、営業経験のある山口さん自らが商談会に出向いて築いています。視察の受け入れや展示会への参加も積極的に行うなど、産品の良さを知ってもらうために、広告やプレゼンにもコストをかけることで、日本全国に販路を拡大し、安定した収量と売り上げを確保できるようになりました。
同農園は、栽培と経営の傍ら、新規就農者のための職業訓練学校「アグリスクールNARA」を運営しています。ここでは、農業のノウハウをレクチャーするだけでなく、有機農業を志す卒業生を山口農園のグループ農園として迎え、生産物の買い上げや就農時の農地提供といった就農サポートを行なっています。その結果、グループ農園もスムーズに有機栽培をスタートでき、安定した収入を得ることができるようになりました。
取り組みの結果
整った職場環境により得られた安定した生活
山口農園現在、70社以上と取引をしており、その野菜は全国各地に流通しています。家業ではなく企業として労働環境を整え、安定した収入や休日を得られるようになったことで、最近では結婚をしたり家を新築する従業員も出てきたそうです。また、作業効率化による負担軽減が進み、高齢でも無理なく働ける環境が整ったため、離職率も低下しました。農家の育成も功を奏し、グループ農園の制度を始めてからは、全員が有機農業を継続でき、現在は11人の卒業生がグループ農園で有機栽培の営農を成功させています。

その後(会社・従業員の声)
「農業は地域ありき」と考える山口さん。地域に認められるために、さまざまな活動を行ってきました。「遊休地を増やさないために農地を生かさなければ」と、高齢化でリタイヤされた農家から預かった農地をスクールの学生農地として活用したり、新たに有機栽培を始めるグループ農園に提供したりしています。「有機農業は、食の安心・安全を担保するだけでなく、地球環境の保護につながります。未来に生きる人が安心して暮らせるように、今、僕たちができることをしなければいけないと感じています」と、地域のため、農業の存続に使命感を抱いています。

