背景と課題
従業員の高齢化対策と新たな人材確保へ取り組む必要性
青ネギの生産農家である株式会社Sun soは、定植や収穫、皮むきといった生産工程を女性のパート従業員が担っています。現在は15名が在籍していますが、約10年前は5〜9人で作業を担っており、1人が欠勤すれば他の従業員にかかる負担が大きくなってしまうという問題を抱えていました。また、従業員が高齢になり、新たな人材確保も急務でした。
しかし募集をかけても応募が少なく、採用した人材も3ヶ月から半年程度で辞めてしまうことが多く困っていました。そこで、代表取締役の尾池章良さんと取締役で奥様の美和さんは、新しい人材確保と人材の定着に向けて、女性が働きやすい環境づくりと生産性の向上の両輪で数々の取り組みを進めてきました。

実際に行った対策
子育て世代のお母さんが働きやすい仕組みづくりと生産性の向上による作業負担の軽減
女性が働きやすい環境づくりに取り組み始めたきっかけは、取締役の尾池さんがお子さんの保育園の送迎で聞いた「働きたいけど、子育てとの両立が難しい」という言葉でした。同じように考えている母親が多いことを知り、勤務時間を柔軟に設定することからスタートしました。
当初は個々の都合に合わせた出勤・退勤の時間で設定できるようにしていましたが、その方法では生産性が低くなってしまうことがわかり、始業を8時半に統一し、退勤は12時、15時、17時の3パターンから選択可能にして、土日祝日を休日にしたところ、小さい子どもをもつ女性からの募集が一気に増えました。同時に、従業員は全員、定植や収穫などの外作業も、皮むきや出荷などの中作業もできるように教育し、人員が欠けても現場に残る人の負担を極力抑えながら安定出荷ができるようになりました。

しかし、最初のうちは人材のミスマッチが多く、採用後に「想像していた仕事と違う」と辞めてしまうこともあったといいます。これを解決するために行なったのが、面接前の会社案内です。面接前に経営理念や職場環境を説明し、出荷作業も見学。不安な事は全てその場で回答し、それでもよければ面接へ、という流れに変えました。すると求職者にとっても、採用する側にとってもミスマッチを防ぐことにつながり、定着率が大きく向上しました。
2〜3年前からは、外部講師を招いたランチ勉強会や、1人ひとりの適性に応じた役割分担で、従業員の意識がより高まり、責任感も芽生えたといいます。しかし何よりモチベーションの向上が感じられたのは、生産物が消費者に届いているという実感です。全国展開する大手飲食店との契約が決まったときは「私たちが作ったネギが全国へ届きます」とグループラインで発信。それ以来、作業効率や品質向上のためにどうすればいいか、といった意見交換がいっそう活発になりました。尾池さん夫妻は、この気持ちをキープするためにも、日常的なコミュニケーションで会社の方向性や経営理念をさりなげく伝えることを大切にしています。

株式会社Sun soが注力しているのは、生産性向上のための環境づくりです。ホワイトボードでの作業管理や作業場への機械の導入を進め、作業者の負担を軽減しています。「環境づくりができていないまま、手を早く動かせといってもそれは無理です。まずは私たちの生産性が上がるように努力しなければ」と力強く話してくれました。
取り組みの結果
働く人が一番働きやすい職場への取り組み
現在Sun so で働く従業員は、勤続が短い人でも4 年、長い人では9年になります。最近では求人を出すこともありませんが、ホームページで会社の取り組みや理念を見た人から「ここで働きたい!」と応募があるほど、求職者にとって魅力ある職場になっています。今後、環境づくりが整えば、従業員ひとりひとりの作業分析を行い、スキルアップのフォローをしていく予定です。また、正社員ではなくパートで働きたいという人のために、パートであっても正社員並みの給与を得られる仕組みづくりを模索しています。

その後(会社・従業員の声)
パート従業員のほとんどは小さなお子さんをもつお母さんなので、子どもの急な発熱や学校行事による休みに対してはお互いに理解があります。学校の長期休暇には、子どもを職場に連れてくることも可能です。2人の小学生の子をもつ従業員の薦田(こもだ)さんは、お子さんを軽トラに乗せてほ場に連れて行き、ネギ植えの体験をしたことも。「働く私の姿を見て、仕事の大変さを理解してくれたようでした」と薦田さん。お子さんにとってもかけがえのない経験になっているようです。

