父親に弟子入りし35歳で事業継承しました。地域内で直売所の増加による野菜の価格低迷が続いていた頃でした。「経営を見直さなければならない」正彦さんは、販路獲得のための営業や交渉など、売ることに専念すべきと考えました。一方、美味しい野菜を作ることが農家の務めという父親とは、考え方の違いから喧嘩をしてしまうこともしばしばありました。同居していたため、家に帰ってからも仕事の話ばかり、仕事と家庭の切り替えの難しさにも悩むようになりました。家族という近い関係だけで成り立っている状況への閉塞感や次世代への事業継承に不安を感じ、家族以外でも事業継承をする策を考え始めました。
事業主の肩書を継承したものの、農家・人生ともに先輩である父親の意見は厳しく、考えを簡単には理解してもらえませんでした。なんとか事業規模拡大のために新しく従業員を雇うことを説得し、研修生や農業に関心のある異業種の方の受け入れを始めました。「農業を学ぶ意欲や興味をもつ人であれば、父も一緒に話をしたり、作業をしてくれるのではないか。後継者を育てることは農場の未来にとっても大切なはず」様々な人や意見が存在する風通しの良い農場を目指しました。加茂さんが提案した自社野菜のブランド化に関しては唯一強い反対がなかったそうです。「加茂グリーンファーム」と命名。ロゴやホームページを作成し、知名度向上も狙います。
従業員採用のため、IT系の仕事をしている知人に相談し、TwitterやFacebookを利用して求人を行いました。農業という枠にとらわれず、人々とのつながりを意識し、新たな関係を切り拓きます。雇用による人の出入りの他、学生インターンの受け容れやレストランのシェフなどに実際に農場を訪れてもらえるよう、営業に出向くこともありました。野菜の収穫体験などを企画し、一般の人も農場に出入りするきっかけを作り続け、家族以外の人が農場にいることが当たり前の状況になっていきました。
従業員を雇用したことで労働力が向上、技術の習得により作業効率化が進みました。新たに7品目野菜を作付けし、個人・卸先ともに届けられる商品のバリエーション、売上が増加しました。メロンは担当者が消費者のニーズ調査から実施、販売するなど、最近では従業員に生産管理、販売を完全に任せられる様になりました。このように生産現場が軌道に乗りはじめ、加茂さんは経営に専念できる様になりました。全体を見渡し、経営計画、営業活動を練り、組織を束ねています。
設備や機械などへの初期投資が小さく、就農へのハードルが低いことは強みです。農場で一番に弟子入りし作業を覚えられたことも、先の経営を意識する時期を早めるポイントになりました。師匠である父親は、時代の変化や加茂さんの変革を徐々に受け入れ、後継者の指導にも熱心です。今では共に取り組んでくれる心強い存在になっています。農場で学び、農場で育む−将来は法人化を目指し、着実に歩み続けます。
住所 | 福岡県糸島市二丈町福井ヲシマ6314 |
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代表者名 | 加茂正彦 |
作目等 | スイカや柑橘類の果物、野菜など |
従業員 | |
URL | http://camogreenfarm.com/ |
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