商品の完成度は高く、既にブランドを確立しています。変化の激しい社会情勢の中で、その価値を守り、さらに多くの方に知ってもらうことを役割と考えます。周囲の2代目と比較し焦りを感じることもありますが、もとより父親を越えることは重要と捉えず、「先代と並び称されればいい」というスタンスで仕事に向き合っています。「弱者を騙すような商売はしない」と、イメージダウンになりかねない情報でも開示しています。例えば、黄身の色を濃くするパプリカ色素由来の「ランレッド」。「エサで着色をするとは何ごと!」と悪者扱いされることもありますが、自社では、見た目も美味しさの要素、食卓の彩りに重要と考えていることを伝えます。もちろん鶏や人にとって無害であることは大前提です。正直に向き合う姿勢は先代から継ぐ社風です。
将来、日本は人口が減少し市場の縮小は避けられません。また日本の農業全体には後継者不足の問題もあります。その中で、早瀬さんは将来的に他農場展開や海外進出を視野に入れています。「メイドインジャパン、では無く、メイドインジャパンテクノロジーとして現地生産し、そこで得た価値を日本の次世代に還元していきたい」と、自社の収益に止まらず、日本の未来に考えを巡らせます。ポイントは日本独自の「生卵を食べる文化」です。よく自社店舗に訪れる留学生たちは、「母国では食べたことないけど、日本の卵だから」と、卵かけごはんデビューし、「なんて美味しいんだ!」と感動しています。世界に通じる「おいしい」生卵、卵かけごはんで市場開拓を狙います。その際に現地に日本と同じ基準で管理された養鶏場が必要になる、という仕掛けです。「これから日本の農業は楽しい産業になっていく」次世代へ、希望の種を撒きます。
世界を目指すためにも足元、基盤固めが必要です。これまでの家族経営にはあたたかさがありますが一定規模を越えると円滑な運営が難しくなってきます。まずは社員が誇りを持って働けるような環境整備を進めます。そして、新卒の雇用、研修制度、労働時間など、一般企業と同様に「農業をする会社組織」に就業できるようにと考えています。他社での修行経験がないため、手探りしながら、経営者仲間、勉強会やインターネット等で情報を集め、組織づくりを行っています。
「人の評価や管理は得意ではない。ほんとうは現場で鶏と接するほうが好きなんです。」と温和な早瀬さん。どんな時も相手の立場に立ち「そういう考え方もある」「そこに至るには理由があってのこと」と、多様な考え方を受け入れます。現場を大切に、1人1人の背景を想像して接する姿勢がスタッフの定着に繋がっています。「成果と呼べるものはまだ」就任間もないこともあり、取り組みの最中です。現在30名ほどのスタッフがいますが、50名になる前にと環境整備を急ぎます。企業体制が安定すると養鶏場を増やすことも可能になります。日本は物流も整備されているため、全国に卵の流通が可能です。また、海外展開のためには、現場オペレーション改善も必要です。今後、新しい挑戦をする際には、農業分野ではまだはじまったばかりの「異業種連携」も積極的に行い、相乗効果で事業展開をしたいと考えます。
大学卒業後、跡継ぎとして実家に戻ったため、20代の頃から経営者の方々と接するという、貴重な機会に恵まれました。周囲からかわいがられ、第一線で活躍する方たちと肩を並べられることで勘違いし、天狗になりそうになった時期もありました。「今は同世代とは話が合わず、自分が偉くなったように感じているかもしれない。でも、勘違いしてはいけない。今後必ずお客様になるし、共に成長していく仲間になるのだから」「凄いのは自分ではない。親に感謝をしなさい」と叱ってくれた大先輩の言葉は今も胸に刻まれています。人としてどうあるべきか、企業の意義は何かを学ぶことができました。これが「次世代のために」の思想に繋がっています。業績悪化や、不安要素があれば、なかなかそこに目を向けることができません。「そう思えること自体が幸せなことだと感じています」親への感謝を忘れず、次世代への継承を誓います。
住所 | 福島県糸島市志摩桜井4767 |
---|---|
代表者名 | 早瀬憲一 |
作目等 | 養鶏 |
従業員 | |
URL | http://natural-egg.co.jp/ |
新農業人スタートのメールマガジン!イベント情報などさまざまな情報をお届けします。