13年前、父親が他界したの機に北坂養鶏場の3代目になった北坂 勝さん。手伝いはしていたので養鶏は分かっていたものの、嫌々だったこともあり、経営は分からなかったと、就農当時を振り返ります。そこから他の養鶏場を見学する中で、うちは少々と変わっているのかも?と感じ始め、それが何なのか、伝わらなければ価値にならないと思い始めます。どうしたら伝わるのかと考え始めた頃、看板屋にデザイナーを紹介されました。それを機に、移住者や今まで出会ったことのない人たちとの出会いが始まりました。最初は、淡路島へ積極的に移住してくる人のことを理解できずにいたものの、会う回数を重ねる度に幸せそうに見えてきました。何も無いと思っていた地元は、人が憧れて移住してくる場所で、ここにしかないものがあるのだ、と気が付きだしました。
お客さんからの様々な質問は、こんなことにも興味を持ってくれるのだと、と生産者と消費者の感覚の差に気付くきっかけとなり、苦手だった接客も次第におもしろくなっていきました。自社が持つ価値をきちんと伝えようと、ここ数年は養鶏場のブランディングにも取り組み始めています。シェフやパティシエの見学も増え、最近では週1回、見学者を案内しています。「どのようにしたら楽しんでもらえるか?自分も楽しめるかな?」と工夫をし、周囲と協力しながら、届けるたまごの良さをきちんと伝える努力を重ねています。
父が亡くなる半年程前から「たまごまるごとプリン」の製造販売を開始しました。見た目もたまごそのままのユニークな姿で、目に留めてもらうことも多く、プリンを求め直売所を訪れるお客さんもいます。しかし、プリンはあくまで本業の養鶏に興味を持ってもらうきっかけと考えています。どれだけ立派なチラシやウェブサイトを作ったり、華やかな展示会に出たりしても、現地の生き物の姿、におい、手触りは伝えられません。そこで直売所では、ただ買うだけでなく「たまごってこう生まれるんだ」と、作り手の存在を現地で感じてもらおうと、レイアウトを工夫し、向かいの平飼いの小屋で鶏を見られるようにしています。また、見学の際は最後に小屋からたまごを自身でとってもらうことで、扱い方や食べ方、食べる際の想いを直接伝えています。
父の他界後は、リスクを分散させるためにも、家族経営から、人を募集して組織を作るなど、個人としても事業としても、色々な人と関わるように心がけました。今、働いてる人は社員・パートアルバイトあわせて40人ほど。ここ数年は外からU/Iターンの人も増えています。おもしろい人がおもしろい人を連れてきてくれ、様々な機会に誘われるようになりました。声をかけてくれる人の期待以上の成果を出せるよう、試行錯誤を重ねています。それが北坂養鶏場の個性に磨きをかけています。
移住者と関わるうちに、新規就農で養鶏を希望する人からすると、設備も技術もある自分はとても恵まれていることをようやく実感しました。無いものねだりをしていたのです。「自分は幸せだったんだな、楽しまなきゃ損だな」と気付くと、環境は変わらないのに見えるもの、感じるものが変わり始めました。養鶏場のスタッフはもちろん、地域にも若い人たちが入ってきているので、養鶏を活用して彼らをサポートしたいと考えています。業種が異なる人たちとのつながりでここまで来られたように、人生の先輩として彼らを応援していくつもりです。
住所 | 兵庫県淡路市育波2442 |
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代表者名 | 北坂 勝 |
作目等 | 養鶏、卵販売など |
従業員 | |
URL | https://kitasaka.net/ |