久保田さんは食べることと、植物が好きで農業関係の仕事に就きたいと大学で農学部を専攻。卒業後に農業普及センターで1年勤めましたが、外で身体を動かしながら実際に作業をする方が自分に合っていると感じていました。しかし非農家出身。「自分で農業を始めるには土地もお金も無い…」と悩んでいた時に、紹介されたのがぶどう畑でした。初対面で「ビビっと来た」と久保田さん。明るく、パワー溢れる女性経営者・新開さんに憧れ「これは運命!」とトントン拍子に有限会社ぶどう畑での就農を決めました。
直売所はもともと「生産者と消費者の架け橋になりたい」と農家の女性グループが母体で始まっています。新鮮で美味しい地場のものがあると評判でしたが、土地柄、夏に葉物栽培ができないことが課題でした。「直売所なのに地元産が出せない」夏になるといつも葛藤しながら、市場から仕入れに頼っていました。しかし「新鮮でおいしい、生産者の顔が見える野菜を届けたい」と、水耕栽培に踏み出したのです。「本当にゼロからだった」と久保田さん。周りに水耕栽培をしている施設もなく、参考資料もほとんどない状態でした。それでも好奇心の方が勝りました。「相談できる人もおらず、手探りで悪戦苦闘しながら、生産にとりかかりました」と楽しそうに当時を振り返ります。
水耕栽培は、ハウスで行うため、天候に左右されにくく通年安定供給が強みです。露地栽培では年に1〜2回のところ、成長が早く年10回程収穫可能です。経験を積めるため栽培レベルもどんどん向上します。たまに店頭で在庫を切らしても「ちょっと待ってて」と直売所横のハウスで収穫、すぐに売れるため鮮度も抜群。お客様からも好評です。夏の葉物需要だけでなく通年でファンのいる商品に成長しています。
現在、直売所の店舗スタッフは30名ほどで全員が女性。7割が現役子育て中で「お互い様よ」と子どもの急な発熱やトラブルにも理解があります。「本当にみんなが助けてくれる、仲の良い職場」久保田さんも2児を育てるワーキングマザーです。「何でも大きな心で受け止めてくれる笑顔の代表と、しっかり者のマネージャーがいるのがうちの強みです!」そんな2人を筆頭に、女性ならではの気配り、安心して働ける環境がチーム力を高め、質の高いサービスに繋がっています。
現在、水耕栽培のスタッフは4名。農業経験者の男性1名と、久保田さんを含め女性3名です。はじめは収穫の予測ができず、出荷できなかったこともあります。さすがにいつも明るい久保田さんも下を向きかけました。しかし「地元産を地元で売っていきたい」日頃からスタッフの想いは一つです。周囲の励ましや、毎日店頭に来るお客様の姿に、前を向くことができました。今では1日単位で売れる数を予測、ほぼ正確に種まきを出来るようになっています。自社の直売所以外に飲食店や他の直売所へも出荷するようになり販路が拡大しています。このように、女性が農業で活躍する機会を作り続けてきた成果として、2019年に代表の新開さんが旭日単光章(農業振興功労)を受賞しました。
お客様に「いつ買っても美味しい」と思って貰えるようにと、直売所では基準を徹底しています。「常連のお客様は正直で舌も肥えています。そういった方に毎回購入していただけることが励みになります」と話します。久保田さんは発信にも力を入れています。「都市の農業だからこそできること」と直売所の近くの幼稚園児を招き、初めての収穫体験を実施しました。日頃畑に縁のない親子の参加は、食育にも有効と手応えを感じています。今後も地域との繋がりを大切に、様々な企画で盛り上げて行きたいと考えています。
若手農家3人でPodcast(インターネットラジオ)トークバラエティー「ノウカノタネ」、YouTube「ノウカノタネTV」の配信もしており、人気を集めています。生産者の取材や「生産者の顔シールが貼ってあるものが“顔の見える野菜”ではない?!」「月の満ち欠けと農業の関係」など斬新で興味深いテーマで楽しめます。さらに、もう一つの顔として、福岡市能古島で3代目続く柑橘農家「久保田農園」のお嫁さんでもあります。1人4役、これからも様々な視点から、大好きな農業を広めていきたいと考えています。
住所 | 福岡県福岡市南区中尾2-1-1 |
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代表者名 | 社員:久保田夕夏 |
作目等 | 農産物直売店 |
従業員 | |
URL | https://www.budou-batake.jp/ |
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