大きな経営課題としては、「栽培品目のリスクが高い」ということがありました。田口農園は、もともと主にメロンを扱っていましたが、栽培には熟練の技と感覚が必要でした。就農2年目の田口さんにとっては、かなり難しい品目です。また、どれだけ手間暇かけていい物を作っても、市場の値段が思っていたようにならない場合があることも見てきていました。収穫時や出荷時に少しでもひびが入ると出荷できないという繊細な品目でもあります。メロンの出荷は年1回、そこで思った値がつかない、もしくはそもそも売れないとなると、受ける打撃は大きくなってしまいます。そこで、一年通して出荷できて、値崩れも起こしにくい品目を探すことにしました。
「家族との時間を確保し、私生活を充実させること」、「稼げる農業経営をすること」を事業継承時に田口さんは掲げます。農業以外の仕事を経験しているからこそ、就農しても週に1回は休みたいと思っていましたが、1年目は休むことができませんでした。ちょうど子どもが生まれたこともあり、ワークライフバランスがとれる経営をすることは、田口さんが農業を続けていくためにも必要な目標でした。
一年中需要があり、しかも値崩れしにくい品目を求めていろいろな種類の作物を試した結果、特に利益率が高く、値が安定しているホウレンソウだけに絞って栽培することにしました。周年栽培に切り替えて、2012年には食の安全や環境保全に取り組む農場や団体に与えられる認証であるJGAPを取得します。それに伴い、出荷方法も完全集荷形式に変更しました。それまで遠距離を1時間から1時間半かけて出荷していたところを、伝票を置いておくだけで済むようにしたのです。同じ農作物である花は出荷ではなく集荷であることからヒントを得た田口さん。「野菜でも集荷してくれるところないかなと探したら、ただで集荷してくれる業者さんがあったんです。違う業種から農業に入ってきたからこそ見えた作業のムダ。いらない仕事はやらなくていいよね、と思うんです」と話します。また、残業をなくすために、従業員と一緒に「いかに平日日中に仕事を済ませるか」を徹底的に話し合い、アイデアを出し合いました。
JGAPを通して特定の出荷先と契約を結び、安定した利益を確保できました。また、年間4~5回転の栽培ができるため、年間を通して仕事があり、安定した雇用を生み出しています。栽培品目が1つなので、複数の品目を扱うよりは仕事を覚えやすいことも、雇用のしやすさにつながっています。その結果、パート従業員はあえてシフトを組まず、月~土曜日の8~17時の間で来たいときに来てもらう、という柔軟な働き方が出来るようになりました。会社一丸となって残業をなくすべく、残業ありきの働き方を見直し、検討しあった結果、週休1日・残業なしという社員の労働条件を確保しながらも、収益は上がるようになりました。
「土地と施設、トラクターなどの農業機をそのまま使えることは大きな強みです。おかげで土地を探したり、ハウスを一から立てたりする手間とお金がかかりませんでした」と振り返ります。先代には現在も働き手として助けてもらったり、仕事で困ったことがあったら相談に乗ってもらったりしています。
住所 | 茨城県鉾田市勝下293-3 |
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代表者名 | 田口真作 |
作目等 | ホウレンソウ |
従業員 | 役員等4名、常時雇用社員3名、パート・アルバイト12名 |
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