代表取締役の藤原信良さんは、実家が兼業農家で、幼い頃から農業への親しみと憧れがあったといいます。大学では経営学を学び、そのままコンサルティング会社に就職しますが、心の奥底には「いつか農業をやりたい」という気持ちが残っていました。就職して数年後「経営学の知識やコンサルタントとしての経験を活かせば、歴史ある農業の中で、新しい経営ができるのでは」と考え、退職と就農を決意します。退職後は、有機農業が盛んな国を訪れるなどして、本格的に農業の勉強をスタートさせました。そして、多くの農業経営者からの情報収集と、5年間の農業法人での修行によって、自分のやりたい農業の形を明確にしていきました。
藤原さんが、5年間の修行の中で見つけた自分らしい農業とは、バランスの取れた農業です。何かに極端に特化するのではなく、品質、味、値段、出荷数…あらゆる側面を両立させたいと考えました。もちろん、このバランスの中には、企業の経済性も含まれています。自己実現と経営を両立させた上で、従業員が満足するような水準の労働環境を提供できなければ意味がないと考えています。さらに、平凡野菜はその名のとおり、多くの人に知られ、日々食べてもらえるようなブランドを目指しています。しかし、多くの人に受け入れられる商品は、一歩間違えれば、個性のない商品にもなりかねません。そこで、商品のパッケージや売り場を工夫することによって、個性がなくならないように気を付けているのだそうです。例えば、パッケージは、消費者の属性を選ばない落ち着いたデザインですが、横須賀の野菜だとアピールするために海のイラストをいれたりしています。時には、売り場の展示方法を提案し、オリジナルのポスターやポップを活用するなど、作り手の人柄を伝えています。最近では、この工夫が功を奏してか、平凡野菜のユニフォームを着た従業員が、「おいしかったよ」と声をかけていただくこともあり、徐々に平凡野菜がこの地域に定着していると感じています。
横須賀市がある三浦半島は、農業が盛んで、特にダイコンとキャベツに関しては国の指定産地にもなっています。成熟した市場の中でも成長できる戦略を考えた藤原さんは、あえて、他の農家が栽培していないレタスに目を付けました。経営の世界では定説ですが、大きな規模を持つ同業者がいる時は、ニッチな需要を発見することが重要とのこと。生産量で全国的に上位になれないとしても、その土地で1位を狙える分野を持つことが、安定した経営に導きます。そんな戦略どおり、三浦半島産のレタスは珍しがられ、これまで着実に需要を伸ばしてきました。地元のスーパーや飲食店からの急なリクエストにも対応できるので、予想していた以上に重宝がられていると藤原さんはいいます。また、紫色のハクサイ「紫奏子」といった変わり種も栽培しており、料亭や高級スーパーといった新たな販路も獲得しています。
平凡野菜は、起業以来、増益増収を達成してきています。また、従業員数も毎年増加し、現在は正社員2名、パート9名が働いています。チームで行う農業を大切にしています。今後も業務拡大に伴い、積極的に雇用していく予定です。従業員には、雇用形態にかかわらず、業績に応じてボーナスを支給するなど、モチベーションアップに向けた制度を整えています。
ゼロからスタートした平凡野菜では、野菜の病気や、作付け量の調整、栽培技術など、ひとつひとつの課題を抽出し、実際に試しながら、解決策を見つけてきました。「どうすればできるのか」を考え抜き、諦めずに試行錯誤を繰り返して、実践するサイクルが根付いています。さらに、「チームで行う農業」というこだわりも、成長を後押ししました。起業当初より、コンサルタントの経験を活かしたマネジメントによって、人材定着を実現させ、安定した人材を確保できています。それによって、畑が高い稼働率を保ち、新しいことにも挑戦できるのです。野菜作りも人材育成も、時代に合わせて柔軟に変化させていくことが大切と教えてくれました。
住所 | 神奈川県横須賀市秋谷2-1110 |
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代表者名 | 藤原信良 |
作目等 | レタス、リーフレタス 夏期はきゅうり |
従業員 | 常時雇用社員2名、パート・アルバイト9名 |
URL | http://heibonyasai.co.jp/ |