実家が酪農家であった東海林さん。地元にいたときは農業が身近過ぎて、将来農業に関わろうとは思わなかったそうです。考えを変えたのは高校3年生の時。先生に恵まれ、農業の幅広さを知り興味が湧きます。その後、農業教員を目指して大学で学ぶうちに、自分が農業のことをまだまだ何も知らないことに気づき、農業系のNPOの職員や野菜の販売、農作業の指導をしていたところ、前代表から声をかけられ、ふるさとファームを立ち上げました。
一軒の農家で作れる作物の量には限界があります。そのため、ふるさとファームでは「新鮮な野菜を家庭で料理して食べてもらえる」商品作りに注力。作った野菜を飲食店や加工食品工場などに卸すのではなく、あくまでも「人々が家庭で料理して食べるものを、新鮮な状態で提供できること」を経営方針として大事にしています。
ふるさとファームでは、札幌野菜のスーパー直販、夏の時期限定で行うトマトのネット通販を主な販売活動としています。また、農業体験で子どもたちに採れたての野菜の味を伝えることは経営のポイントでもあります。子どもたちのほとんどは、農業を体験し、収穫した野菜を食べて野菜の美味しさを知り、育てるだけではなく調理し食べることの大切さを感じます。そして家に帰ってからも家族と食事をすること、食べることを大切にしてもらえるように取り組んでいます。また、生産量については、冬の長い北海道では栽培期間も短いので工夫が必要です。トマトのハウス栽培面積は最初の目標に届いたため、今後は、ネギなどの露地野菜の面積を増やして、全体的な生産量を上げようと考えています。
「農業は地味なので」…と、成果について言葉を濁す東海林さん。ひと息置いた後に「約10年、よく続けてこられたなというのが大きいです。ここまで続けてこられたことが成果で、続けることが大事だと思っています」と、何もない所から農地を広げていったときに味わった苦労を振り返ります。コープさっぽろの“ご近所野菜”コーナーの出荷ランキングでは、ふるさとファームは設立4~5年目以降、概ね全野菜部門で10位以内に入れるようになっており、着実に成果を積み上げています。それは、好きな野菜を作るのではなく売上が得られる野菜を選んで栽培するという方針が、実を結んだためです。また、年間売上目標を決めて、年間生産量の目標を立てている他、社員には年間生産量の目標と各月の売上目標を、パートさんには1日あたりの出荷量の目標をそれぞれ共有しています。
地域の人との関わりを大事にしているふるさとファームの姿勢も、売上アップに大きく貢献した要因の一つです。現在農場がある地域に初めて来た頃は地域住民の皆さんの、新参者に対する不安が伝わってきました。地域に馴染むために、行事などには積極的に顔を出して、地域住民の皆さんとの関係を構築してきました。一方で、冬期間に栽培する難しさ、経営していくことの厳しさを体感していました。そんなときに、ふるさとファームを支えてくれたのが子どもたちでした。農業体験にやってくる子どもたちの喜ぶ顔や、ここで自分たちが辞めてしまえば彼らを招待できなくなることを考え何としてでも次の春を迎えようと思えたのです。自分たちを受け入れてくれた地域の人や子どもたち、お客様に感謝しながらも、「新鮮な野菜を作り続け届けること」を目標に、ふるさとファームは走り続けます。
住所 | 北海道札幌市南区石山637−6 |
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代表者名 | 東海林幸恵 |
作目等 | 野菜 |
従業員 | 役員等2名、常時雇用社員2名、パート・アルバイト5名 |
URL | http://www.furusato-farm.jp |
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