手をかけて作る品質の高い果物だけでなく、比較的手がかからない加工用果物(食品や飲料に加工する目的で栽培する果物)も作っているやまがたさくらんぼファーム。生のまま販売する果物と加工用の果物とをバランスよく栽培することで、限られた人手でも規模を拡大することができ、後継者不足などで余った農地の有効活用に貢献しながら事業の発展を目指しています。また、フルーツ狩りに訪れる人のほとんどがバス旅行の団体客だった以前と比べて、今は家族連れや友人同士の個人客が中心となり、農園でゆっくり過ごしたいなど、求められるサービスも変化しました。そこで、フルーツ狩りと合わせて楽しんでもらえるようにと、2015年に果樹園の敷地にカフェをオープンさせ、パフェやソフトクリームなど、自社の果物を加工した商品の販売を展開。果物を使ったさまざまな演出にも取り組んでいます。こうした観光業との結びつきで、9割にのぼる商品の直接販売も、JAや商社を通さずとも来園者とのつながりでPRを円滑に行うことができています。
現在、役員3人のほか、正社員7人、パート5人が従事しています。5つの部門「生産・販売・加工・飲食・観光」のそれぞれに責任者を配しながら、全員がどの部門も担当できる「オールラウンダー」となるよう育成しています。専門的な仕事をつくらず、日ごろから互いの仕事を補えるよう努めることで、家庭の事情などで急に仕事を休む人が出ても、柔軟にカバーし合える環境を整えています。また勤務時間は、5〜11月をサマータイム、12~4月をウィンタータイムとして、それぞれ8~17時(8時間)、9~17時(7時間)と変化をつけています。サマータイムはフルーツ狩りのシーズンでもあり、特にサクランボの収穫時期にあたる5~7月は、年間売上の約6割を稼ぐほどの繁忙期で、早朝の収穫や残業も発生してしまいます。一方で、ウィンタータイムは来園者もなく収穫も落ちつき、労働時間を短くすることができるため、季節に合わせたメリハリのある勤務体制をとっています。
「従業員が幸せで仕事にやりがいを感じていなければ、良いサービスを提供できない」という考えから、やまがたさくらんぼファームは従業員とその家族を大切にしています。また、「学びと団結」を目的に、毎年1月には2泊~3泊で先進地視察を目的に社員研修を行います。こうした研修や普段の飲み会の席でざっくばらんに出てくる従業員のアイディアや意見は、積極的に取り入れています。チームビルディング(メンバーが主体的に関わることを目指した取り組み)を大事にしている矢萩さんは、「小規模経営なので、なおさら団結してチーム力を上げていくことが大切」と力を込めます。
やまがたさくらんぼファームは、フルーツ狩りを楽しむために来園した人から直接要望を聞くことで、消費者の声をしっかりと反映させた商品やサービスの提供を実現しています。農業と観光業という異業種を連携させるからこそできる事業展開で、さらなる飛躍を目指します。
住所 | 山形県天童市大字川原子1303番地 |
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代表者名 | 矢萩美智 |
作目等 | 果樹、生産・販売・観光・加工・飲食 |
従業員 | 役員等3名、常時雇用社員8名、パート・アルバイト5名 |
URL | https://www.ohsyo.co.jp/ |