三島さんは鳥取大学農学部で農業機械を専攻し、卒業と同時に有畜複合農業にあこがれ、農業法人に就職。しかし農業の厳しさに挫折し、1年で農業法人を退職したあと、大阪府にある農業機械メーカーで開発に携わります。2002年、結婚を機に島根県浜田市に移住後は、農業機械の修理・販売会社に勤めていましたが、もう一度農業をはじめようと2010年に就農を決意します。退職のあいさつ回りの際、農業経営の方向性があやふやで決めきれていないのを見かねて、地域の有機農業グループであるいわみ地方有機野菜の会の会長さんが、会で勉強するように勧めてくれました。当時所属する10軒のうち半分以上の経営者が20~30代と若いにもかかわらず、専業で生活できる所得を得ていることに驚きます。そのとき三島さんは30代半ば。「自分も頑張ったら、同じように成果を上げられるのではないか」と、会に所属して有機野菜の栽培を経営の柱にしていくことを決意します。研修を受けて翌年秋に最初のハウスが建ち、ハウスでの葉菜類の栽培が始まりました。
大学の農学部では、概論や実習で農業について広く浅く学ぶことができました。しかし、実際の現場では商品となる農作物を継続的に育てたり、利益が残る経営を行う必要があり、就農してから学んだことの方が多いそうです。就農を決めたとき、ハウスで有機野菜を作ろうとは考えていませんでしたが、いわみ地方有機野菜の会に入れてもらうことができ、成長が早く年間で5回ほど作付可能でリスクも分散できる有機葉物野菜を選択しました。就農の翌年には有機JASの認証を受け有機野菜の出荷が始まり、以降毎年規模拡大に比例して売上も増えてきました。
有機JASでは使用可能な農薬もありますが、三島農園では農薬も化学肥料も一切使わないため、病害虫の被害を受けるリスクがあります。リスクを軽減するため、すべての品目を複数のビニールハウスで栽培し、ビニールハウスごとに収穫のタイミングをずらして、出荷が途切れないように管理しています。「うちは年に4~6回ですが、いわみ地方有機野菜の会の多い方は1年に1つのハウスで7~8回も作付けします。」と、三島さんは先輩農家への尊敬をこめて話します。農業生産以外では、2018年春から社屋の加工室でクラフトビールを製造しています。きっかけは、隣の江津市主催のビジネスプランコンテストで「江津はじめ近隣市町村に多くの地ビール醸造所を作り、オクトーバーフェストを!」と謳って大賞を受賞した夫婦が、その後実際に免許を取得し、㈱石見麦酒を立ち上げて醸造を始めたことです。それを知った三島さんは「自分もやってみたい」と興味を持ち、醸造方法や免許取得の指導を受け、現在では自社製有機サツマイモや地元産の黒豆やショウガを原料に自社オリジナル商品6種の他、OEMの商品を安定的に製造販売しています。
創業して1年半はビニールハウスはありませんでしたが現在は48棟まで増やし、ハウス面積は1haを超えました。当初は妹と2人でしたが、役員3人、従業員10人の13人になりました。面積に比例して人数が必要なことからフルタイムの通年雇用を増やしてきたため、社会保険対象者は9人で、平均年齢は44歳です。冬期に葉物の生育が鈍くなり生産量が減少するため、仕事量を確保するには露地野菜を作ったり加工品を製造販売することで若い人の安定長期雇用を目指しています。
三島さんは「必要なタイミングで、必要な人とのいい出会いがありました。本当に運がよかった」と、いわみ地方有機野菜の会や石見麦酒につないでくれた方々や、従業員との出会いについて感謝を込めて振り返ります。「上手に農業やいろんな商売の経営をされているところはたくさんあります。まずは、真似てみることからはじめるのが、一番の近道だと考えています。誰もやっていないことを思いつくことは難しいことですが、自分もやってみたいと思ったことは、自分に何が足りないか、どうすれば良いかを考えて行動することで、実現が可能であると考えています。たくさんの問題があり、その解決に毎日追われている状態です。」
住所 | 島根県浜田市国分町1243-1 |
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代表者名 | 三島淳寛 |
作目等 | 有機JAS葉菜類、根菜類、果菜類、クラフトビール製造販売 |
従業員 | 役員3名、常時雇用社員7名、パート3名 |
URL | http://mishima-farm.com/ |
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