川端さんが農業を始めたのは28歳の時。以前は会社員で管理職に就いていました。外仕事の方が好きな川端さんにはデスクワークは向いていなかったようで、ストレスから体調を壊すことが多かったと言います。ちょうどその頃、本屋で“28歳が人生の転機である”といったタイトルや“ターニングポイント”と書かれた本を目にし、今の自分にリンクしているように感じた川端さんは、思い切って会社を辞め、以前からやりたかった農業にチャレンジすることを決意しました。「家族からは大反対されましたが、どうしても農業をやりたくて、車を売って保険も解約して資金にしました。同時に農業で成功してみせる!という気持ちが強くなり、就農ではなく起業する気持ちでスタートしました。」と川端さんは教えてくれました。
右も左も分からないまま飛び込んだ農業の世界で、教えてくれる知人もいなかった川端さんは、見ず知らずの農家の元へ「弟子入りしたい」と何日も通ったそうです。後々、土地を買ってくれるならという条件付きで、その農家さんは受け入れてくれました。見よう見まねで学び、その数ヶ月後には、1ha(3000坪)の土地を購入することができ、独自のれんこん作りが始まりました。ある日、畑に農薬をまいたところ、水中の生き物が一瞬で浮いてくる光景を目の当たりにします。農業の知識がなかったので、初めは化学肥料なども使い、農薬としては認定されているものを使用していましたが、あの光景を見たらこんなの絶対に食べたくない、と思ったそうです。結局農薬を使っても虫食いは出ているので、農薬を使わないという選択をしました。それ以降、川端さんは農薬や化学肥料の使用を一切やめて、独学で土づくりを研究し「土・人・環境」の三つの幸せづくりを理念に、人にも環境にもやさしい農業を目指し、実践しています。
日々、手探りで続けたれんこん作り。極寒で凍り付いた氷を割りながらの収穫作業でも、心のしんどさは一切感じなかったそうです。夢中になって働き、ようやく軌道にのってきた2012年に農事組合法人蓮だよりを設立。大切に作ったれんこんを無駄にしたくないという思いかられんこんチップやパウダーを作って販売したところ、れんこんチップがとても好評だったそうです。需要が徐々に高まり生産が追い付かなくなってきたことから、総合化事業計画の申請をして機械を新しいものに買い替え、効率化を上げて生産量を増やしました。同時に氷温施設の冷蔵庫も導入し「氷温熟成加賀れんこん」として販売。おいしさと機能性を上げることで付加価値を付けるなどして、青果だけでなく加工品事業にも力を入れて売り上げを伸ばしていきました。
2006年に農業を始め、最初はマイナスからのスタートでしたが、徐々に農地を増やして2015年にはれんこん畑だけで3haの畑を所有。法人化した時期から従業員を雇用し、現在はパートを含めて9名で作業をしています。今後は、れんこんチップの需要が更に高まってきたこともあり、加工品にもっと力を入れていきたいとのこと。既に、新しい加工工場を建設する予定があり「新しい商品もどんどん開発して、将来的には直売所を設けられたらいいなと思っています。まだまだやりたいことが沢山あります!」と川端さんは、更なる成長を目指して新しい計画に胸を膨らませています。
「自分の気持ちがぶれなかったことだと思います。こうしたいというビジョンがしっかりあったので、それに向かって自分がやりたいことをやって突っ走っていただけですが(笑)周りが応援してくれたことで、更に頑張ろう!と思いました。」と、これまでの歩みを振り返ります。農業というものは、もっと可能性があって、表に出て良いものだと川端さんは考えています。「カッコイイと思われるような職業になるように、どんどん魅力を伝えていきたい。農業は、自分でチャレンジできる環境と可能性がたくさん詰まっています!」と話す川端さんは、支えてくれる仲間と共に、これからもさらにおいしい加賀れんこんを育てながら規模拡大へと進んでいきます。
住所 | 石川県金沢市才田町乙183-2 |
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代表者名 | 川端崇文 |
作目等 | 加賀れんこん(ハス・蓮)の生産・販売 |
従業員 | 社員、パート等含めて9名 |
URL | http://doronko-farm.com/ |
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