以前から、「農業には共に働く仲間の力が不可欠だ」と考えていた大塚さんでしたが、農業における人材確保の難しさに悩むこともあったのだそうです。そんな大塚さんが辿り着いたのは、既存の採用基準に囚われない、多様な人材登用でした。現在、大塚ファームでは、正社員の他に、外国人実習生や、70歳以上の高齢者、障がい者、子育て中の女性など、多種多様な人材を積極的に採用しています。大塚さん曰く、「農業の人材確保においては、会社の都合ではなく、従業員の事情を尊重する柔軟性が大切」とのことで、その言葉どおり、働き方は従業員によって様々です。自由な働き方を提供することで、人材育成という観点からも持続可能な農業を目指しています。
大塚ファームでは、従業員の生活を尊重した、フレキシブルな働き方を提唱しています。パート・アルバイト従業員は、2週間ごとにシフト管理が行われており、自分のライフスタイルによって勤務時間を決定しています。また、長期休暇などを利用して、期間限定で働くことも可能なのだそうです。「個人のペースで、無理をせずに仕事をしてもらうことが、農業における人材定着の鍵です」と話す大塚さん。子育てや介護など、あらゆるライフイベントが訪れても働きやすい職場となっています。出産や子育てを経験した女性の社会復帰の場にもなっており、最初は週に数時間だけの勤務だった従業員も、数年後には立派な戦力になっているのだそうです。2014年には、そんな職場環境が認められ、農林水産省主催の「農林漁業振興会」において、「輝く女性特別賞」を受賞しています。また、年齢、性別、国籍の異なる人材が働く大塚ファームでは、従業員の特性も十人十色です。「仕事に人を充てるのではなく、その人に適している仕事を作るんです」と話す大塚さんは、業務の担当も、その時の人材によってフレキシブルに調整するべきだと考えています。大塚ファームでは、その一環として、それまで1人で担当していた業務を分担したり、空いたスペースで新たな野菜作りに挑戦したりするのだそう。その自由な発想と柔軟性で、「農業は、ひとりで黙々と作業をするもの」という従来のイメージを覆そうとしています。
大塚さんは、従業員のキャリア形成のために、農業法人でも民間企業と同じように、従業員の目標設定や評価制度が必要だと話します。大塚ファームでは、各従業員が年間目標を設定し、その達成具合が昇給の査定に反映されるそうです。また、業績によっては、正社員だけでなく、アルバイト・パート従業員にもボーナスを支給しており、仕事の頑張りが、目に見える形で従業員に還元される仕組みとなっています。さらに、冷暖房の完備や、清潔感のあるトイレの設置、そして、週に一度給食を提供するなど、従業員への細かな配慮も欠かしません。体力を使う農業において、ホッと一息付ける場所があるだけでも、モチベーションの向上につながるのではないでしょうか。
大塚ファームでは、札幌市内から車で約40分という立地も活かし、農業体験も積極的に受け入れています。土に触れ、自分で採った新鮮な野菜を食べる体験は、多くの人にとって貴重なものとなるはずです。「普段デスクワークばかりだという人も、休日だけ、運動の一環で野菜を作ってみたらどうかなと思うんです。自然の中で、日光を浴びて体を動かすって楽しいですよ」と話す大塚さん。特に、「若い世代に農業のおもしろさを知ってもらいたい」という想いが強いのだそうです。大塚ファームでは、目の前の従業員や消費者を幸せにするだけでなく、50年後、100年後の未来を見据えた農業が営まれていました。
住所 | 北海道石狩郡新篠津村第36線南42番地 |
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代表者名 | 大塚裕樹 |
作目等 | 水稲、有機JAS農産物の複合経営 |
従業員 | 家族従事者4名、役員等2名、常時雇用社員11名、パート・アルバイト15名 |
URL | http://www.otsukafarm.com/ |
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