実家も牧場経営をしていたという代表取締役の高橋憲二さん。「牛が好きで、牛のいない生活は考えられなかった」と、酪農家を志した経緯を振り返ります。次男である高橋さんは、父親が経営する牧場(千葉県八千代市)とは別に新規開拓した土地(現在の高秀牧場)で牧場を営むことになりました。そのとき高橋さんは23歳。「事業として着実に収益を生み、地域に還元できる酪農をやろう」という思いを抱いて、酪農家人生をスタートさせました。
生乳の生産は利幅が薄く、それだけでは安定的な経営が難しいのが酪農業の現実です。この課題を解決するために、高橋さんは、利益を生み出す仕組み作りに尽力してきました。チーズやジェラートなどの加工品の製造・販売や牧場体験などの事業展開だけでなく、利益の循環を地域一帯で捉え、地域活性に貢献する循環型酪農の仕組みを構築したことが大きな特徴です。
搾乳による生産性の向上、そして、飼育コストの削減を最重要課題として、“課題”を“価値”に変えることを主眼に戦略を立ててきました。酪農家の経営コストで特に大きな負担となっているのが飼料費です。飼料のほとんどを輸入に依存する日本の酪農家は、その価格の乱高下に経営を翻弄されてしまいます。そこで高橋さんは稲刈り後の田んぼで、秋から春までの時期、牧草やトウモロコシを栽培してもらうよう地域の稲作農家と連携。独自の飼料を作り、輸入飼料に頼らない仕組みを作りました。また、牛の糞尿を使った堆肥や液肥の生産にも乗り出し、その処理に困っていた近隣の酪農家を救う手立てともなりました。「BM小清水」と銘打った良質の堆肥は、地域の農作物の生産に還元され、環境や作物の品質にも貢献しながら、地域内での循環を構築しました。
2ヘクタールの田んぼから始めた牧草作りは、稲作農家の協力もあって作業効率が飛躍的に向上し、作付面積を最大で85ヘクタールまで増加させることに成功しました。こうした循環型の規模拡大は、機械や設備への投資も必要となり、地域の農家との信頼関係を大切に築いてきたからこそ実現できたと言えます。
研修として2年間、カナダやアメリカの牧場で過ごし、大きな金額で牛が売買されるなどビジネスとしての酪農の世界に触れた高橋さん。そこで得た知見をもって日本の酪農で実現可能なことを模索してきました。その中で生まれたのが地域で循環させる今の経営スタイル。まだ前例の少ない畜産農家と耕種農家との連携を図り、地域全体で利益を生み出す仕組みを考え続けてきた高橋さんは、「何かを始めるとき、1人ではどうにもならない。地域との連携や関わる人たちとの信頼関係が何よりも大事」と言います。
住所 | 千葉県いすみ市須賀谷1339-1 |
---|---|
代表者名 | 高橋 憲二 |
作目等 | 酪農、加工事業、カフェ |
従業員 | 家族従事者4名、常時雇用社員6名、パート・アルバイト4名 |
URL | https://www.takahide-dairyfarm.com/ |
新農業人スタートのメールマガジン!イベント情報などさまざまな情報をお届けします。