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第三者継承を実現し、新しい視点で収穫量の向上を目指す

浅小井農園株式会社/関澤征史郎
浅小井農園は、滋賀県近江八幡市にあります。田園地帯の中で一際目立つ高さ約4mのハウスは、8,000㎡の面積を有し、県内最大規模。ここではIT管理された光合成促進技術を駆使して「朝恋トマト」を栽培しています。さらに県内初のJGAP認証の取得、SDGs宣言など、新しい取り組みを実施しています。これらは約13年前に新規就農した松村努さんがはじめたもの。そして、この浅小井農園に2018年11月に研修に来たのが、銀行員から新規就農を目指していた関澤征史郎さんでした。当初は自分で農地をもち1人で始める予定でしたが、2020年10月に第三者承継により浅小井農園株式会社の代表取締役社長に就任しました。就任してから、約1ヶ月。「おいしいトマトを大量に安定的に継続的に出荷」に向けて、より収穫量を上げ、より継続的に出荷するための課題解決に取り組んでいます。

銀行員から農園の研修生になった理由は?


銀行では、法人向けの融資を担当し、日頃から中小企業の経営者と接していた関澤さんは、だんだんと自分で経営を行いたいと思うようになりました。食べることが好きで食に興味があったので、食の一次産業を経営できる農家は理想的な経営体だと感じたそうです。農家をやると決めて、まず行ったのは新規就農者向けの国の融資や補助金などを調べること。そこで驚いたのは、他では見ない国の手厚いバックアップでした。認定新規就農者になると、無担保・無保証・無利子で数千万円の融資が受けられるのです。



東京で銀行員をしていた関澤さんの農家への転身に家族は最初反対していたそうですが、これらの制度が後押しとなり、夫婦の出身地である関西を中心に農地を探すことになりました。経営という観点から、販売・物流の面で有利な都市型農業を目指しますが、大阪などで農地は見つけられませんでした。辿りついたのは、京阪神へ車で1時間、東には名古屋も近いという立地の良さと、近畿圏随一の耕作地がある滋賀県の東近江市でした。市の手厚い支援もあり、ここで農地を借受けしました。週末学校で農業経営を中心に一通り学んでいましたが、1人で農業をはじめるにあたりまだ知識などが足りないと感じました。そこで農業次世代人材投資資金の制度を利用し、ハウス栽培を学ぶため隣の市である近江八幡市にある浅小井農園に2018年11月に研修生として入りました。



第三者が事業の引き継ぎを成功させるには?


浅小井農園は、初代の松村努さんが54歳のときに公務員からの新規就農ではじまりました。そのため後継者がいないことを研修期間中に感じた関澤さんは、松村さんに「会社を自分に任せてもらえないか?」と、研修が終わる1ヶ月前に提案しました。銀行員時代、「事業承継」に関する融資も担当していたことから、簡単なプレゼン資料を作成して提案をしたそうです。この提案をまずは「面白いね」と受け入れてもらってから、関澤さんはじっくり準備を進めて、2020年10月に第三者承継が実現しました。



この時に関澤さんが気にかけたのが、13年前に新入社員として農園に入った社員のこと。事前に今後どうしていきたいかなどのヒアリングを行い、経営者より栽培に興味があることなどを確認しました。その後、松村さんや社員の想いを何度もヒアリングし、事業計画や、人材の最適解を検討し、今後のキャリアプランなどの説明を毎日丁寧に積み重ねてきました。



関澤さんがこの第三者の事業承継が成功した理由の1つとしてあげたのが、「先代と自分の得意分野が全く異なること」でした。一級建築士の資格を持ち、土木・建築を得意とした先代の松村さんは、高設備なハウスをつくりあげ、さらに新しい技術の取り入れなども積極的でした。そして関澤さんは銀行員の経験から数字をみることや、融資対応、交渉などが得意です。先代の築いた土台をいかして、今は経営という観点でさらなら飛躍を目指しています。



作業の効率化を目指して実施したこと


研修中に感じた課題は、県内でも随一の敷地面積もあり、さらにIT投資をはじめ、高設備なハウスがあるのに、収穫量が少ないこと。県内のトマト農家の平均くらいの収穫量でした。そしてその主な原因として考えられるのが、2つありました。



1つ目は、大玉とミディ(中玉)トマトを同じハウスで栽培していたこと。これら2つは栽培管理から、収穫時のオペレーションも全く異なります。これらが同じ場所で栽培していることで作業の効率が低下していました。そこで、浅小井農園ではミディトマトに集中して栽培することにしました。大玉の方は、関澤さんが新規就農用に取得した農地で栽培を始めたそうです。この2つを分けたことで作業の効率化が大きく進んだそう。



収穫量向上のために必要なコストもある


そして2つ目は、人不足により、収穫ピーク時には管理が追いついていないこと。ハウスの中にはレールがひかれ、そこにある椅子に座ったまま横にスライドしながら収穫、そして収穫したトマトをレールを使って運ぶなど、従業員が働きやすい工夫などもしてありました。ただ、当時のメンバーは社長を入れて5名。休暇などを考えると常時動けるのは3.5〜4名です。基本1反には1名いるとも言われており、単純に計算すればこのハウスでは8名必要になります。さらに高設備で収穫量が多く望めることを考えるとさらに多くの人員が必要なはずです。関澤さんは「収穫量が上がって、売り上げが上がるなら、その分の必要なコストはかけるべき」という考えで、現在固定メンバー9名、派遣の方にも来ていただいています。まだ今年の収穫が始まったばかりですが、例年同時期の1.5倍ほどの収穫量はあるのではと感じているそうです。



目指すのは、農家の「後継者問題」の解決


事業を継承していくには、後継者がいないという問題と、事業を継承する際に資金が必要になるケースがあることです。関澤さんは銀行員時代にその事業承継時の融資を担当しており、さらに自身が第三者承継で農家になりました。その経験をいかして、後継者、資金で悩んでいる農家の経営を代わり、現地でのオペレーターの育成・派遣などを行い、同じようなハウス農家の経営継続に貢献させていきたいと関澤さんは考えています。


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