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緑肥をいかした農業で、オーガニックでおいしい野菜を増やしていく

株式会社いかす/白土卓志
会社設立当初は、仲間の有機野菜の宅配とレストラン事業でスタート。そこから1町歩の畑をはじめ、現在は4町歩強の神奈川県平塚市で一番大きい圃場面積を持つまでになった株式会社いかす。代表は、友人と起業し新規就農した白土卓志さん。きっかけは、大学時代に書いた未来日記の31歳欄の「農業大作戦」。当時、農業をしている友人たちを通して、「炭素循環農法」に出会いました。現在、畑で取れた野菜や仲間の野菜を使った「宅配事業」と、未来を創る新しい農業を学ぶ「サステナブル・アグリカルチャー・スクール」を両輪の事業として、農業体験やオーガニックタウン構想などさまざまな取り組みを広げています。

最初にはじめたのは「宅配」から

神奈川県二宮町にある「炭素循環農法」を実践している農家さんに出会った白土さんは、都内から通うようになりました。その後、子どもの誕生や2011年の東日本大震災を機に、神奈川県湘南地域に引っ越し。そして、炭素循環農法の農家の全国ネットワークが出来上がった2013年に、東京都中央区勝どきにて「太陽のマルシェ」が始まりました。白土さんは全国の約20の農家さんから野菜を仕入れて、マルシェでの販売を行いました。その後マルシェが雪で中止となった際に、仕入れた500袋の野菜を急遽宅配に切り替えたところ、すぐに完売したことがきっかけとなり、宅配をスタート。定期会員35人ではじまり、現在は300人以上にまで広がっています(さらに開始時の35人中30人が継続!)。

株式会社いかすは、友人たち4人で開始。その中にシェフがいて、レストラン事業も並行して始めましたが、昨年コロナで閉店。「収益の大半をレストラン事業が占めていたので、てんやわんや。2017年から始めた畑の方はのびのびやっていましたが、レストラン閉店をきっかけに、生産の方で事業として継続する仕組みを早急に確立する必要があり、昨年からギアを入れ替えて、加工品や観光農園の準備を開始しました。第2創業期のはじまりです」と、白土さんは話します。

農業生産で事業の継続ができるためにやることはシンプルです。もちろん、宅配の定期利用者を増やしていくというのも1つの方法で、食べる人が遊びにくる場としてのブルーベリーの観光農園などの準備も進めています。ただ一番大切なことは「意図をもって、畑を使い続けること」だと白土さんたちは考えています。畑は長く使うことで秀品率も上がっていきます。土が野菜にあわせて育っていきます。

緑肥を使い自然の力で土を改善する

畑には一般の肥料を使わず、1作必ず緑肥の「ソルゴー」を入れています。そうすると、大体年に1回しか野菜をつくれません。葉物でも2回。それでもなぜこの方法を白土さんたちが選択しているのかを尋ねると、「野菜のおいしさや栄養価のために、畑に窒素ではなく、炭素を入れたいから。例えば炭素の影響で、うちで採れた大根はビタミンCが一般の2倍程度あります」と教えてくれました。

日本は単位面積あたりに使う肥料が世界上位で、さらに雨も多い。そうすると、有機物を畑に入れて微生物が増えても、雨の影響で微生物が死んでしまいます。特に化成肥料を利用してきた土地では耕盤層と呼ばれる硬い層ができます。そこに雨が降ると耕盤層から下に水が染み込まずに微生物が死に、畑は発酵ではなく腐敗がおこります。ソルゴーは根が2mほど伸びていくため、耕盤層を自然に崩していけるのです。白土さんたちが最初に借りた畑は、5年以上耕作放棄されていた土地でしたが、「ソルゴー」のおかげで就農1年目からある程度の収穫が実現したのです。

オーガニックの見える化で新規就農のハードルを下げる

この緑肥「ソルゴー」については、神奈川県の農業技術センターと東京農業大学と一緒に実験、研究を進めています。そしてポイントをまとめてオーガニックの見える化をしたいと白土さんは考えています。それができたら新規就農者のハードルが下がる。70点の野菜づくりからスタートできます。「そこから先は実際の植物との対話なので、実物そのものをみて、仮説を試し、試行錯誤していくしかない。運良くか、運悪くか農業の世界に入ってきた人たちが生き残って、ワクワクやれたらいいな」と白土さんは考えています。

白土さんの想いは日本だけにとどまらず、海外にも広がります。実際に有機農業を堆肥で行うと膨大な量の堆肥が必要となりますが、緑肥ならそのタネを用意すれば良いので、経済的にもよく、発展途上国でもどこでも実現できます。実際にラオスの農水省の方が見学にも来たそうです。

おいしい野菜を増やすために

現在「いかす」では、研修生6人を受け入れています。研修生を卒業して、近隣で就農している卒業生も3人。ほとんどが「サステナブル・アグリカルチャー・スクール」の卒業生。今後、農場を10町歩くらいまで増やしていきたいそう。そしてそこから先は、卒業生たちなど仲間が増やしていければと考えています。そのためにもスクールや、技術の見える化を実施しています。未来に向けて「おいしい野菜が増えればいい」という想いで進んでいく白土さんです。

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