事業計画で立てた数字を徹底的に追い求め規模拡大へ

湘南佐藤農園/佐藤 智哉
住宅街に広がる畑にあるハウスには、近隣の住民がおいしい野菜を求めて訪れます。ここは、湘南佐藤農園の直売所です。代表の佐藤智哉さんは、義理父から農家を引き継ぐも、竜巻による尽大な被害にあい、一度会社員に戻ります。その後、2014年に義理父が亡くなり、再度農業を継ぐことになりました。竜巻による被害が残り、その残骸の片付けなどマイナスのスタートでしたが、ハウス1反、畑6,7反が現在はハウス3反、畑は2.5haまで拡大。売り上げも引き継ぎ1年目から約7倍になりました。その成功の要因は、「事業初年度より5カ年の事業計画を立て、徹底的に数字に執着したこと」と佐藤さんは言いました。

5カ年の事業計画を達成した理由は?

事業計画は最初の5年でこの地域の同規模の売上トップクラスを目指すように組みました。そして、この計画を達成するために数字に執着しました。技術では長年農業をしている人には敵わないので、自分の経験でいかせる強みは何かと考え、会社員時代に成果を出すためにしていた、徹底的に数字をとりシミュレーションをすることを農業でも実践しました。


とは言っても、1年目はまだ何もデータがない状態。農水省が出している「農業経営指標」に近づくためにはどうしたらよいかを考えながらやっていました。ただこの数値は、篤農家の数字なので、普通にやっては近づけません。そこで、例えば春・秋に収穫だったら、夏に空いている際に1ヶ月で採れる野菜を挟むというように無理矢理でも数字を近づけるようにしていました。

また大事なのは、価格や販路にこだわったこと。まずメインにつくるものをトマトにしたのは、義理父の代からつくっていたことと、単価がはり、味によって価格に差をつけられることから。そしてそれをどういうマーケットに向けてどう単価設定をつくれるかというのを意識していました。まず価格の最低ラインを決めて、それ以下での交渉は断っていますし、販路も毎年見直しています。昨年からはコロナの影響で、直販率95%以上としており、その時々の状況をみながら柔軟に対応しています。

周囲にアンテナを貼ることで技術を高める

農業は教科書通りにいかないものなので、技術についても常に周りにアンテナをはっています。まずは地域にあった農業を確立するため、周りの人はどういうものをつくっていて、どういうタイミングで種を撒くのか、肥料を入れるのかなどをしっかり見て、吸収していく。そしてその際に必要なのが地域のつながりです。以前から積極的に地域に活動に参加し、今は消防団の分団長をしているそうです。

また農園の特徴となっている「アイメック農法」は、色々栽培方法を調べている中TVで見て、そこから県内で実施している農家を見つけ、アポを取り、農場を見に行きました。実際に食べてみて、この農法でいくことに即決してからは自分の採取しているデータを元に新しい栽培方法の長所や短所を見極めて取り入れていきました。

目指したい用途によって味を変えていく

アイメック農法のトマトは糖度が高く、10度近くなるそう。佐藤さんも当初は甘トマトが評判でTVの取材もくるほどでした。ただトマトは単品で食べるより、料理の脇役と考える佐藤さんは、その甘さに疑問を持ちます。また、直売所の試食コーナーでお年寄りの方が皮を残しているのに気づきました。トマトは甘さが増すとトマトの皮が硬くなるので、そこから甘さを少し抑えたトマトをつくるようになりました。

料理の脇役として光るように糖度は8度ほど、そして子どもも食べやすいように酸味は残らず、皮が少しうすくなり食べやすくなるバランスを追求し、2年ほど前から今のトマトになりました。

人員計画も数値を元に

現在、佐藤さんは農業の実作業はスタッフなどに任せています。実施していることは、環境づくり。環境というのは、畑の環境、働く人の環境、そして今後の戦略を形にしていくこと。まず畑の環境は、ほぼ毎日すべての畑を回って観察し、作業内容を決めるのが佐藤さんの仕事。

そして働く人の環境づくりも大事な仕事。現在、常時働いているスタッフが2名、パートの方が6名。そして地域農業に興味がありきている方が20名ほど。最初数人から始まり、現在は20名までに広がりました。佐藤さんが心掛けているのは楽しく作業してもらうこと。あえて細かい説明もせず、作業をしてもらっています。実際後で手直しが発生することもありますが、せっかく来てもらっているので、楽しく帰って欲しいという佐藤さんの思いからです。それは藤沢市の「援農ボランティア養成講座」の講師をしていることにもつながっています。

最初は佐藤さん1人ではじめました。そこからスタッフは数値を元にしたシミュレーションから無理のない範囲で増やしてきました。今で各工程にかかった時間をアプリにて秒単位で全員に計測してもらい、Web上の共有ファイルで報告してもらいます。それを元によく漫画である戦闘力の分布図のように、今のメンバーではこれくらいで作業が可能というのを把握し、メンバーの増減を見極めています。またスタッフとは各人の個性をみながら、ビジョンの共有や、今後について話したりというのを行っているそうです。これらは将来農家になって人を雇うことを見越して転職した人材会社での経験が役にたっているそうです。

6年で働く時間を1/3削減

佐藤さんの農園では研修生が1名おり、スタッフもいずれ独立を目指しています。藤沢ではこの10年くらいで40−50人くらいの新規就農者がいますが、実際に農業だけで生計を立てている人は数人とのこと。農家と名乗ることはできるけど、食べていけない人が多いのを少しでも減らしたいという思いを持つ佐藤さん。食べていけない理由の1つとして、「働き方がわかっていないのでは?」と言います。「やはり1つの技術で食べていけるようになるには、農業に限らず時間をかけて相当努力が必要になり、覚悟を決めて働くことが重要」とのこと。

佐藤さんも実際に1人ではじめた6年前は休みもなく働いていたそうです。ただそれだけで、ずっと休みなく働くのは自己満足だとも思うそう。佐藤さんは畑の拡大とともに人を増やしたのと同時に、徹底的に数字でしっかり無駄を省いてきました。今は週1、2で休みがとれるようになり、労働時間も初年度と比べて一人あたりで計算すると1/3削減しました。

キッチンカーを試験場として活用

佐藤さんの夢は、藤沢・湘南地区のお土産をこの地区でとれた農産物でつくること。その一歩として春から始めるのがキッチンカーです。主力のフルーツトマトをつかったトマトピューレと、その時の旬の野菜を使ったピザを提供予定です。さらに今後は、今育てている大豆をつかった大豆ミートとトマトのミートソースなど、キッチンカーをつかってさまざまな商品を提供し、お客様の反応をみる予定です。

実際にキッチンカーは2019年から始めた2回目の5ヵ年計画には入っていませんでした。ただ、直売所に来られるお客様の声、そして他のトマト農家さんがやっていないことをしていきたいという想いから始めることにしました。今後、キッチンカーから湘南佐藤農園発の湘南のお土産が生まれるかもしれません。

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