「地域の困りこと、国の困りごとを解決していくことなど、1つ1つ丁寧に取り組んでいきたい。」そして、先祖が石垣を組んでぶどうの木を育て、この素晴らしい景観を作り出してくれたことに感謝し、活用し、次の世代に引き継いでいくこと。それが、農業や企業が存続していくための秘訣ではないかと高井さんは思っています。
人口は減り、コストは上がり、人手不足となり、環境はどんどん変わっています。台風や高温などの自然の力による影響も重なり、思い通りにぶどうが作れないことがあります。また、大切に育てたぶどうをどのような形で売ることが望ましいのかを合わせて考えていくなど、多くの課題があるといいます。しかし、課題のある環境を楽しむかのように「課題があるからこそ、やることがある、大量の負の遺産を宝だと思えるように自らを洗脳中です」と、明るく答えます。高井さんは以前、IT業界で働いていました。自社を客観的に見ながら、ITの観点からも課題を解決していく術を持っており、そうした経験を活かしながら、1つ1つ取り組んでいます。
創業から100年となるカタシモワインフードですが、酒造り業界での100年は決して長くはないのだそうです。意識しないで、常に、新参者として新しいものを追い求めていくような、柔軟性を忘れない農家でいたいと、高井さんはいいます。
守りたいものは、代々先祖が大切にしてきた景観。大都会の周辺にある現在の農地を大事にしています。その農地があるか無いかによって、町の景色や雰囲気が大きく変わり、生物の多様性や、子供たちが親しむ場所にも影響します。そうしたことを含めて農地を守ることは、文化を守っていくことと同じで、何とか次の世代に繋げていける道を探りながら、文化ややり方を継承していくと同時に、新しい世代にあった方法や可能性を求めたいと考えています。
カタシモワインフードは、まず第一に品質を大切にしています。一つ一つを大切に育て、加工し、丁寧にお客様に届けること。加工品の価値は、一次産業の農作物が大きく影響するといいます。天候不順や人員の問題が起きたりする中で、いかに良いものを生み出していけるかということを考えながら取り組んでいます。そして、父親と一緒に大阪ワイナリー協会を設立した後、更に関西ワイナリー協会の設立を皆で協力して行いました。
また、大阪府の環境農林水産総合研究所の一部に出来た「ぶどうワインラボ」と一緒に、”西日本の温暖化その他環境変化に負けない、日本にしかない出来ないぶどうを作ろう”と、品種の改良・育種など、長年大阪で大事に育てられているデラウェアを、ワイン用にするにはどんな育て方がいいのか、醸造するにはそれをどう生かす作り方がいいのかなどの研究を始めています。
他の地域とか世界の先進事例のコピーではなく、ここだから出来ること、ここだから生み出せる品種、ここだから美味しくなる、代わりの無いような技術を生み出し、人が来たくなる地域や守りたくなる地域になりたい。新しい時代や更にその先にも目を向け、何十年かかってでも頑張っていきたいと考えています。
「親の世代の農業を継ぐか継がないかを迷っている人はたくさんいると思っています。そういった立場にいる私たち世代の方は、マイナスなこと、格好悪いこと、生産性の悪いこと、を出来れば避けて通りたいと考えている人も多いと思うのです。選択する時に、一番考えて欲しいのは、親がやっている通りにやる必要は無いということ。
家業が農業ではない方と比べて、農家の子供はアドバンテージがあり、農家でない人よりもずっと少ない努力で農業が出来るということ。これを才能の1つだと思って欲しいです。カタシモワインフードは代々、自分が創業者だと思って、新しいことをやりなさいと言われております。出来ることは本当にたくさんあるんです」と、高井さんは自分の置かれている環境を活かす方法として教えてくれました。
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