GreenGroove代表の中島光博さんは、元はIT関連の企業に勤めていました。30歳を迎えるタイミングで仲間からの声かけに「一発当てたんねん!」という気持ちで農業に挑戦します。4人の仲間で始めた農業は、当然簡単なものではなく、途中1人、2人と抜けていきましたが、中島さんは「自分には向いている」と感じたといいます。新規就農とはいえ、ベンチャー企業に参加したような感覚のスタートだから何事も客観的に捉えられ、文化や歴史、継承こそがモチベーション、という昔ながらの農業とは全く違う感覚がGreenGrooveらしさを生み出したのです。
中島さんの目指したのは「言い訳しない農業」です。農業は労働時間に制限がなく、天候にも左右されるからこそ、特別視されやすい職業です。しかし、中島さんはあえて、扱う商品が「野菜」というだけで、食品メーカーのような考え方で取り組んでいます。農業にはマーケティングも企業努力も足りていない。「農業の構造は悪い点がたくさんあるんですよ。」と話す中島さん。
農業に関わっていると多くの人から「どんな思いでやられているのか?」とか「日本の農業をどう変えたいのか?」と聞かれるのだそう。「まわりが勝手に農業に対してハードルをあげているんですよ。」働いて幸せにならないと意味がない。だからこそ優良企業となって、普通に就職してもらえる会社を作りたかったのです。
GreenGrooveの農業は、普通の農業とはちょっと違います。都市型農業は面積が小さく、露地栽培は天候に大きく左右される為に、新規就農者では1作栽培が上手くいかないだけで、廃業せざるを得ない場合があります。中島さんは生産面積が小さくても、施設栽培は周年栽培が行えることが、経営を行う上で大きなメリットになると考えたそうです。そして、オリジナルの栽培システムを自分たちの手で作り上げたのです。
一時は2人になってしまったものの、今では従業員が社員・パート含め7名にも増えました。「とにかく自由な社風がいいですね。新しい野菜に対しても積極的に取り入れるので、シェフが食いついてくれるようなものを探しては、試してみたい種を育てたりもしています。」と話すのは水耕部農場長の登谷智美さん。
仕事のおもしろさを尋ねると、「農業なのでもちろん野菜を見てはいるけれど、いかにお客さんの要望に応えられるか・・とか、たくさんの注文をどうさばいてスムーズにより良いものをお届けできるか・・そのための段取りがうまくいったりするとうれしいですね。」と、思わぬ返答がかえってきました。中島さん同様、農業ではあるものの、従業員の皆さんも「ビジネス」としての意識が強いのです。
都市型農業ならではの利点をうまく使い、試行錯誤しながらやってきた11年。大阪農業は市場やJAへ出荷することも可能ですが、大消費地が近い分お店やお客様への直売が容易で、マルシェなどでもプロの料理人の声が聞けることはとても貴重です。多品目の野菜を並べることにこだわっていた頃、シェフから言われた「色々ミックスしておいてくれたら助かるのに。」という一言がGreenGroove自慢の「ヨーロピアンリーフミックス」に繋がったのです。
また、周りの農家さんの野菜も一緒にマルシェで販売したりしながら、情報交換を行い、農家どうしの横のつながりを持つことも、農業経営を進めるにあたり大切にしてきた事の一つです。「運もありますよ!」と笑う中島さんの気負わないスタイルもまた、GreenGrooveの成功の秘訣なのかもしれません。
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