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農福連携にも取り組み、自分らしさを大切にする働き方を実現

株式会社アグリー/井上早織
三重県名張市で、水耕栽培の葉物野菜を生産する株式会社アグリー(以下アグリー)。都会暮らしの井上早織さんにとって「農業」は未知の世界。けれど昨今、のびのびと暮らしている田舎暮らしのご夫婦やイキイキと自分たちが描いた理想の農業を目指す人たちをテレビ番組などで観るたび、いつか自分たち夫婦も都会の生活に区切りをつけて田舎に移住したいと思うようになりました。そんなとき、水耕栽培事業の話が舞い込み、偶然のご縁とタイミングで三重県名張市に移住。ゼロから農業をスタートすることになりました。

女性目線で進めてきた経営とは?


「当初夫が代表を務めていましたが、ただ生産するだけでは利益を出すことが難しく、苦悩と崖っぷちの中で、夫の事業を継承する形で新規就農者となりました。どうせだめなら・・・と、一念発起し、次々と新しいことにチャレンジしました。」と話す井上さん。常識に囚われずおもいっきり自分らしく、女性であることの強みを最大限に活かした経営は、多くの人から注目を浴び、メディアにたくさんとりあげられました。



まずは、女性目線の新たなプロモーションを展開し、品質の高さと美味しさにこだわった野菜作りに注力、それを地元の消費者に伝えるために食育やさまざまな手法で、「アグリー農園®」を地元定着型のブランドへと周知することに成功。さらに、自社の水耕栽培の特性を福祉の分野でも活かし地域社会に貢献するため、地元のNPO法人が運営する障がい者就労継続支援事業所と連携を行いました。これにより農業の人材不足、障がい者の就労先不足という2つの課題の改善になり、理想的な農福連携を実現しています。



連携することで双方の課題を解決できると期待されている「農福連携」は、CSV(Creating Shared Value=社会的な課題を自社の強みで解決することで、企業の持続的な成長へとつなげていく差別化戦略)にもつながり、「誰もがやりがいや成長を感じられる社会」を目指し、さらに新たなチャレンジとして、古民家再生や耕作放棄地の開墾にも取り組んでいます。


経営戦略として目指して力をいれてきたことは?


井上さんは「誰もが“自分らしさ”をもっと大切に、もっとそれぞれの個性が活かされる社会の実現」を目指しています。そんな想いを「農家」から社会に発信すべく、小学校での食育活動やSNSでの発信などに力を入れており、これがファンを増やすためのブランディングにも繋がっています。そして、経営戦略として目指してきたことは、「安定かつ持続可能な組織づくり。」まさしくこれまで構築してきた農福連携が、「安定かつ持続可能な経営戦略」の柱となっています。



「都会から移住してきた新規就農者が、農業で生計を立てることがどれだけ難しいことかを身をもって知った」と話す井上さん。直面した課題をそのままにせず、「変革」を視野に女性ならではの感性や視点で、一つひとつ打開し切り開いていった延長線上に「今」があると語ります。


ワークライフバランスを考えて実施していることは?


正社員の負担軽減と休みたい日に休める体制がとれるよう、できるかぎり業務を見える化したシフト制を組み、ワークライフバランスを重視し完全週休二日制を実現しています。また、積極的ITの導入を行い、業務の簡素化やペーパーレス化を図っています。これにより俗人化していた作業が標準化され、介護や子育てなど、何らかの事情による欠勤や退職が出ても、他の職員でも対応できる体制が整ってきています。



農福連携で障がい者とともに働く現場では、2017年にはクラウドファンディングで農場に広くて清潔で使いやすいトイレを新設。また、農場にあるあらゆるモノや置き場に名前を表記し5Sを徹底する細やかな指導行ったり、ハード面に関しても女性目線で様々な改善を行ってきました。このような取り組みを続けて気が付いたことは、障がいがある方が働きやすい職場環境に整えるということは、障害があるないにかかわらず、誰もが働きやすい職場環境になるということです。


社員のモチベーション向上のために取り組んでいることは?


井上さんは「社員にとって「評価制度」というとあまりいい印象を受けないかもしれませんが、モチベーションを上げるためとしての評価制度はとても重要」と考えています。就労訓練を受けている障がい者の方の中には、現状を維持したい人、無理のない範囲で作業したい人、もっと頑張りたい人などそれぞれの思いがあります。それは従業員も同様。つまり個々のワークライフバランスを大切にしながら、モチベーションを上げ、その人の能力を最大限に引き出せる仕組みづくりとしての「評価制度」を構築していくが必要という事。その考えの下、試行錯誤する中で構築した仕組みの評価制度は、ここで働くすべての人のモチベーションアップのツールとして毎年改良を加えながら導入が進んでいます。



このツールは会社の目指す方向と求めている社員像を見える化し、社員が自己評価を行い、不足する項目をどのように達成するのかを上司と共に考え実行します。また、売上など細かな数値目標を設定し、その成果が給与やボーナスに反映される仕組みや、職場環境の改善点が見つかった場合、設備投資や環境改善の取り組みを実施するなど、社員ファーストの取り組みを行っています。


これからの農業の可能性とは?


今後もアグリーでは様々な事業展開を予定しています。「農業の可能性は無限にある」と考える井上さんは、若い人たちにもその可能性を見出してもらい、多くの世代を巻き込んでいけるように活動の幅を広げています。その一つが、都会に住んでいる人や学生を巻き込んで有効活用しようとしている一万坪の耕作放棄地の開耕です。古民家民泊、カフェ、ドッグランの運営、家庭菜園を作るなどの構想を練っているとのこと。



また2019年10月に「のうふくラボ」を新たに設立。ノーマライゼーションの理念をベースに老若男女や障害の有無に関わらず、多くの人にとってのサードプレイスを築きたいという思いから立ち上げに至ったそうです。「農業をベースに広げられるビジネスのおもしろさ」を実感する井上さん。自然災害などあらゆる困難があっても、再び芽を吹き、青々と繁る葉から命の力強さを感じられる農業に大きな魅力を見出しています。


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