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酪農家だからつくれる選ばれるヨーグルト

株式会社オオヤブデイリーファーム/大薮裕介
株式会社オオヤブデイリーファームさん(以下、オオヤブデイリーファーム)があるのは、西日本でも指折りの酪農地帯・熊本県合志市。1975年に創業され、現在の代表取締役である大薮裕介さんは2代目です。自家産堆肥で作った畑を使って無化学肥料でトウモロコシを作り、ホルスタイン、ジャージー、ブラウンスイス種の牛を育てています。更に、農の循環と経済の循環の両輪を持つことで強い酪農業を目指し、「生産(牛乳)×加工(ヨーグルト製造)×販売」という6次産業化に取り組んでいます。また、1990年から酪農教育ファーム認定牧場として、修学旅行生や地域の保育園や小学校の子どもたちを牧場に受け入れています。搾乳体験やトウモロコシ畑迷路などを通して、命(=食)の温かさを体験していただく事で、人間は植物や動物そして誰かのお仕事のおかげで生かされているという事を感じてもらいたいという想いで活動されています。

就農して感じた外的影響が大きい酪農の課題とは?


「餌になるトウモロコシから作り、時間をかけて大事に育ててきた牛から搾った牛乳を、捨てなければいけない時が続きました。そして日頃愚痴さえ言ったことがない父親が初めて弱音を吐いたのを聞いて、目が覚めたんです。」そう話すのは、オオヤブデイリーファーム2代目の大薮裕介さん。大薮さんは大学卒業後就農。その数年後、需要が供給を下回った際に生産を抑制させる「生産調整」という政策が酪農家に大打撃を与えました。捨てるといっても、「産業廃棄物」扱いになるので、下水にも流せない。自分は「産業廃棄物」を作っているのか、と憤りを感じたと言います。「俺らの仕事はミルクをバルククーラーに入れたら終わりなんだよ。」と他の酪農家からも言われたように、そのタンクに入っている量で値段が決まり、雄が生まれればセリに出され、値段をつけられ・・・と自分達に価格決定権がないことにも疑問を抱くようになりました。



また、飼料の一部や農業機械は海外から輸入しているものもあるため、為替の変動が飼料代や機械代に直結するなど、外部要因の影響が大きい“酪農”という農業自体の弱さを感じました。加えて生乳は、一元集荷・多元販売されるため、販売時には複数の生産者の生乳が混ざった状態で出荷されており、TPPやFTAなどの動きの中で、日本のミルクや自社のミルクの存在価値をどのように設定していけばいいのかが課題でした。


事業継承後に目指したビジョンは?


大薮さんは自分たちに決定権がない酪農に疑問を抱くようになり、何か変わらなければいけない、と突破口を探すために様々な勉強会に行くようになりました。その中で、とある熊本の大学教授に出会い、「牛乳は水よりも安く、しかも売れない。売れなければ産業廃棄物として捨てられてしまう。」と悩みを話しました。すると教授は、「大薮くん、売れる売れないは関係ない。あなたの商品に選ばれる理由はありますか?」と言いました。



大薮さんは、その言葉に衝撃を受け、目が覚めたと言います。大学教授の言葉がきっかけで、「全て起こったことは自分ごととして考えて、自分が提案できるものを作って出して、お客さんに選んでもらえばいいだけだ」と考えるようになりました。


自分の商品が選ばれる理由を探すとは?


通常牛乳は、農協などの組織に様々な生産者の牛乳が集まり混ぜられ、メーカーなどに売られます。牛乳を自社で製造して売るとなると、1ℓ800円とスーパーでは手が出せないような金額になってしまいます。牛乳として売り出すのは難しい、と考えた大薮さんは、牛乳丸ごと商品化できる“ヨーグルト”を作ろうと考えました。濃い牛乳で作ったヨーグルトは2層に分かれるので、飲み比べする必要なく、見た目で濃いとわかります。自分の牧場の牛乳の良いところを活かし、表現できるヨーグルトを作ることに決め、約20カ国ものヨーグルトを食べ歩きました。


その中で、乳脂肪中の脂肪球を細かく砕き、 安定した状態にする“均一化“をしていないノンホモ牛乳で作ったヨーグルトは市場の5%くらいしかないという現状を知ります。同じ品質の商品にするために、広い発酵室で作ろうとすると、場所によって固まり方が変わるため、場所の入れ替えが必要となり、手間がかかるため、大手では作れないのです。



試行錯誤しながら独自の方法で、ノンホモ牛乳で作ったヨーグルトを安定した状態で製造することに成功しました。しかし、大薮さんは「ノンホモのヨーグルト、というだけではうちのヨーグルトがお客さんから選ばれ続ける理由になるのか?」と不安も持っていました。その時期にたまたま九州バイオクラスター協議会(KBCC)による「フランス オメガ3プロジェクト」に出会います。「フランス オメガ3プロジェクト」は、オメガ3を利用して、農畜水産品の機能性・品質向上やその成分を利用した健康に役立つ商品化による市場形成を目指しているプロジェクトです。そのプロジェクトの創始者の「土から食物を育てている自分たち農家は食物連鎖の中心にいる。だからこそ、子供達や消費者、農畜産物、地球環境に対して責任を持たないといけない。」という思いに共感し、プロジェクトに参加することになりました。


オオヤブデイリーファームだから作れるヨーグルトとは?


プロジェクトに参加することで、オメガ3を含む飼料を食べさせ、オメガ3が含まれた牛乳から作るヨーグルトを製造販売できるようになりました。お客さんに“選ばれ続ける理由”にこだわり続けた大薮さんのヨーグルト。今はヨーグルトの他にもジャージーミルクから作ったソフトクリームや、ヨーグルトを更に追熟して作ったジェラートなどの商品を展開しています。




その商品が生まれたのも、外に出て人と出会うことがきっかけで叶いました。「自ら外に出ることで、新たな気づきや、次のステップに引き上げてもらえるようなチャンスなど、さまざまな出会いが生まれている」と大薮さんは話します。全国的に有名な百貨店のバイヤーさんとの出会いもその一つです。オオヤブデイリーファームのヨーグルトにほれ込んだバイヤーさんが、同百貨店の食品宅配サービスに「1個200g約1000円」のヨーグルトをラインナップし、結果、売り上げ3位に貢献できました。そういったつながりは国内だけにとどまらず、ハワイやシンガポールでの販路拡大にも結びついています。そういったつながりのおかげで、ヨーグルトの売り上げは毎年130%ずつ上がっていき、食品部門では日本一にあたる農林水産大臣賞を受賞しました。


2代目だからこその強みの活かし方は?


「両親が人生を懸けて積み上げてきた牧場をどうにかしたい」という想いで事業を受け継ぎました。中小企業家同友会で「若竹屋は先祖より受け継ぎし商いにあらず。子孫より預かりしものなり。」という若竹屋酒造場の家訓に出会い、大きく心を揺さぶられました。事業とは、先代がしていたことをただ受け継ぐのではなく、3代目の子孫から預かっているものと考えれば、今2代目の自分は何をするべきか。と想いを新たにしたのです。大薮さんは「事業の持続や成長には血液(お金)が大切な要素ですが、お金は美味しい!や楽しい!といった心が動いた時の感動が姿を変えたもの」と考えています。



これからも牧場で生まれるミルクや仔牛肉や酪農体験などを活かし、お客様の心を動かせるような商品をご提案していきたいと考えています。これからオオヤブファームさんは、「次の世代を育むため、我が家のミルクにできること」をテーマに、先代の時から行なっている農業体験による食育、また高品質な牛乳にしかできない、独自のヨーグルトの製造を極めていこうとしています。



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