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農業を通じて働く喜びをわかちあえる農福連携

株式会社元気もりもり山森農園/山森壮太
地域特産の三浦大根の他、ニンジン・タマネギ・ホウレンソウなど、年間を通して13品目ほどの野菜を栽培している「株式会社元気もりもり山森農園」(以下、山森農園)。代表取締役の山森壮太さんは一般企業に就職後、実家の農家を継ぎました。2011年に就労継続支援B型事業所として、福祉作業所「株式会社虹の橋」(以下、虹の橋)を設立。農業を障がい者たちの就労の場として活用する事業モデルを模索しつつ、地産地消の野菜作りに取り組んでいます。

福祉×農業から生まれる新しい価値とは?


温暖な気候を生かした、さまざまな作物の産地として知られる三浦半島ですが、少ない農地と高い人件費では少品目大量生産・大量出荷が可能な茨城・福島・千葉・埼玉に比べると、大都市の中央卸売市場における競争力が発揮しにくいのが現状です。就農の時、父親から小売り業の経験を活かし、農協に卸すだけでなく、もっと消費者に味をアピールしてほしいと依頼されます。その頃、6次産業や市場外流通が増え、農林水産省のサポートも手厚くなったことが後押しになり販売を強化。宅急便を利用するなど販路を広げました。しかしまもなくして父親が他界。全てを任された山森さんは農業を家業としてやるだけではなく、生産、販売の金銭的な価値を守りつつ、もっと農業を世の中に価値ある仕事として高めたいと考えました。そこで着目したのが福祉です。



いま国は障がい者を福祉作業所だけでなく、もっと地域生活に根ざし一般就労することを進めていますが、山森農園では以前から、特別なことでなく、自然なこととして、近所に暮らす障がいのある方にスタッフとして働いていただいていました。父親が亡くなり、経営的に障がい者の受け入れが難しい時期を経験した山森さんは、就労の意欲はありながら就職しにくい人が働ける場所を提供する事業の必要性を感じ、虹の橋をスタートさせました。働く意欲があればあたりまえに活躍できる社会。山森さんは世の中が求めることと農業の整合性をとることを目指しました。「農業は働けば誰でも仕事ができて役に立つ。九十過ぎたおばあちゃんでもやっている。仕事を生き甲斐にできるのが農業のいい所だと思います」誰もが働きやすい社会にするために農業を役立たせたい。山森さんは農業に新しい光を当てます。


福祉の知識より大切なものとは?


山森農園には役員二人・社員二人、虹の橋には社員が二人と障がいのある方が十名程所属しています。山森さんも社員の方も福祉の仕事の経験はなく、施設や病院と連携をとりながらスタートしました。働く人のカルテをもらい、出来る範囲内で作業をしてもらいます。仕事を成り立たせるのに必要なのは、働くみなさんの個々の特性や課題に対しての共感や理解をすること。その一方で、「指示の割り振りや、業務内容をこまめに確認しながら進めていくことに気を使っています」と、社員の佐藤さんが話してくれました。佐藤さんは他県でフルーツトマト専門の農園で働いていましたが、他の種類の野菜を作りたいと地元にある山森農園に転職しました。佐藤さんも特別な福祉の知識はありません。



山森さんは、「農業と福祉の両方の知識がある人はなかなかいません。何気ない会話や気遣いができることが大切です」と、佐藤さんがいることで場が和み、雰囲気がよくなると言います。佐藤さんも「コミュニケーションの問題は無く、従業員同士が楽しく仲良くやっています」と話してくれました。農業は経験や知識が無いと意思疎通が出来ません。山森さんは佐藤さんには現場での経験を積んだ後は、指示を出し、失敗しそうなことをフォローできる立場になってほしいと思っています。




虹の橋設立から八年。福祉施設から外の世界に出て、前向きな気持ちで仕事や生活に取り組めるようになり、次のステップに自信を持って進む人たちが増えています。山森農園では障がいも個性の一つとして認め、一人一人の能力を生かし従業員同士が連携をとり、気持ちよく働ける職場作りの実践をしています。福祉事業への取り組みに踏み出した一歩が企業を元気にすることにつながっています。


働く環境を向上するために取り組んでいることは?


「会社の方向性や成長は従業員の意見が左右していくのでとても大切です」と山森さん。従業員の人たちが意見を言い合い能動的に仕事に関われるように日々、工夫しています。会議を開き意見を引き出そうとしてもなかなか出ません。そこで作業報告を記す日報や、LNEを使って気づいたことや思いついたことを気軽に言える場をつくり、集まった内容を会議で話し合うようにしています。他にも年に二回あるボーナスは支給の一ヶ月前に300項目程のチェックシートを渡し、スタッフ自らが判断し、それを基に賞与を決めています。



山森さんの働きかけで能力の違いはあっても個々の努力と成果が認められ、気づけば農園の運営に能動的に携わっている実感が得られています。従業員の成長とともに山森農園の未来はあります。山森さんは従業員に成長してほしい姿を伝え、一人一人にも目標を設定させています。風通しの良い関係があるから言い合える。経営者と従業員という固定的な関係にならないためにも、雑談などでコミュニケーションを深めることを大切にしています。

地域と人と共に成長する農業とは?


時代は変わり農業も新しいカタチが生まれています。山森さんは人々を支援し、地産地消と地域農業の発展させるスマート農業を目指しています。三浦半島は起伏が激しく農地が狭いため機械的なスマート農業は難しい土地です。しかしこの限られた土地でもできる新しい農業を日々模索し、福祉事業への取り組みや、農業のIT化のチャレンジ、地域資源(住んでいる人や観光資源)を活用した販売…社会や地域にどれだけ還元出来るかという視点も大切に、地域とともに成長する山森農園でありたいと願っています。



地層を背にした広々とした畑はフワフワとした人参の葉や大根の葉、一面、鮮やかなグリーンで覆われていました。収穫繁忙期になると分業していた従業員の人たちが入り乱れて作業になるそうです。「従業員はもっと人を増やして欲しいようですが、その前に作業手順を洗いだしたり、効率を見直さないと…」従業員に寄り添いどんなときも創意工夫を忘れない山森さん。その精神で農業の新しい可能性を引き出し、次のステージへ向けて歩んでいます。




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