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”モノ”から”コト”へ。「体験を売る」観光農園

平田観光農園/平田真一
平田観光農園は、創業63年の老舗農園です。果物の栽培・販売に加え、果物狩りなどの観光事業にも長年注力してきました。個人消費の低迷やお土産需要の減少により、一時は経営難に陥りましたが、2005年に平田真一さんが家業を継ぐ形で社長に就任してからは、常務の加藤瑞博さんとともに、それまで以上に「体験を売る」ことにフォーカスした事業を展開。アウトドアブームを先取りした魅力的な演出で経営を盛り返すとともに、若い就農者に対して農業の可能性の大きさを示しています。 果物栽培を行いながら、農園でとれた果物を使ったスイーツを提供するカフェや、ダッチオーブンを使った料理や薪割りを森の中で楽しめる体験施設「ダッチオーブンの森」など、”モノ”ではなく”コト”を売ることに主眼を置く平田観光農園。こうした新しい試みは、お客様だけでなく新規就農者の目にも魅力的に映り、若い人材が集まっています。

人材育成を行う上で大切にしていることは?


平田さんは、人材育成において一番よくないことは、「未来が見えない」ことだと話します。ただ単純な農作業を強いるだけでは従業員のモチベーションは上がりません。大切なのは、理念を見せること。平田観光農園では、信頼の味を届けること、新しい農業の道を切り拓くことを経営理念に掲げ、事務所に掲示し、朝礼で唱和しています。



同園が目指すのは、都市部に住む人が農業に触れる接点となること。少しでも農村の良さを知る人が増えれば、農園の存在意義は大きくなり、それが従業員のモチベーションにもつながると考えています。実際に同園では、生き生きと楽しそうに働く従業員の姿がありました。


年間休日を確保するための仕組みとは?


一日のスケジュールは、従業員自らが決めます。勤務時間は朝8時から夕方17時まで。残業はほとんどありません。変形労働時間制を採用し、繁忙期である春から秋までは忙しく働きますが、農閑期である冬季になるとリフレッシュ休暇を10日〜2週間ほど取得でき、年末年始も10日以上の休暇を設けています。また、ダブルワークも可能。農園での仕事を終えた後にアルバイトをする従業員もいますし、自分で栽培した野菜や果物を同園内で販売することもできます。




従業員のキャリア形成など環境づくりで大切にしていることは?


従業員に対して平田さんが貫いているのは、「立場が人を育てる」という考え方です。立ち上げた子会社の社長に従業員を就かせたり、プロジェクトチームを組んで担当事業の販売価格や販売方法まで決定させたりと、事業を任せることで責任感を芽生えさせます。常日頃のコミュニケーションやミーティングで運営方針について話し合う機会はたくさんありますが、指示を出すことはありません。そうやって自ら考え経営の勘を磨くことが、同園の経営にも、また本人が独立する場合にも役立つからです。



農業を指導しているのは、常務の加藤さん。厳しい反面、人材育成への気持ちが熱く、加藤さんを師匠とあおぐ従業員も多いそう。そんな加藤さんは、自らの農業を「100通りあるなかの一つの方法」と言います。どの方法を採用するか、それは自分自身で見極めるよう従業員に説いています。




従業員からの意見やアイデアもどんどん聞き入れます。ただし、実行に移すかどうかは「おひさま」という独自の判断基準を満たしているかどうかで決まります。すなわち「オリジナリティがあるか」「必要とされているか」「採算がとれるか」「(お客様が)満足できるか」。この4つの基準を満たせば、ゴーサインが出て予算がつきます。トップダウンによる強制ではないので、たとえ失敗しても学ぶことが多く、本人の成長につながるのです。


これからの時代を創る縛られない農業とは?


平田さんは、農業を日本で一番の成長産業と考えています。高齢化が進み農業人口が減少する中、農業をすること自体がレアであり、活用できる耕作放棄地もたくさんあるからです。稼ぐ農業を実践している人はたくさんいるのに、「農業は儲からない」と思われ、就農する人が少ない。だからこそチャンスなのだと話します。



2008年、同園は長野県にドライフルーツ製造販売する子会社、株式会社果実企画を設立しました。農家が再生産可能な価格で原料果実を調達し、都市の消費者に日本の果物の美味しさを通年で供給する取り組みは、国産ドライフルーツブームの火付け役となり、全国で好評を得ています。広島の山の中で農園を営みながら、長野でビジネスを成功させるという新しい農業の道を切り拓いたのです。



これまで農業にとって最大のリスクだった天候は収入保険でヘッジできるようになり、インターネットを使えば、全国さらには海外にも農産物を販売できる時代になりました。場所にも時間にも縛られない農業。その可能性を知ってチャレンジしてほしいと、平田さん自らがそれを体現しています。

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